はざまもり「通り魔」(1992年9月16日第1刷発行)
収録作品
・「あなたが見ている」
「三歳の頃に両親を事故で亡くし、天涯孤独の身となった雪村由香里。
彼女はホームで成長するが、彼女のもとにはしばしばプレゼントが送られてくる。
送り主については、彼女が子供時代に「公園で会ったおじさん」ということしかわからない。
中学卒業後、由香里は、ホームのつてによって、小さな食品会社に就職する。
そこで、頼りがいのある社長に想いを寄せるようになるが、社長は轢き逃げにあい、死亡。
悲しむ彼女のもとに「おじさん」から黒いドレスが届けられる。
次に、彼女はプティックに就職し、そこで年上のチーフと恋仲となる。
だが、彼も放火による火事で死亡。
この時も、「おじさん」から黒いドレスが送られてくる。
このドレスが喪服であることに気付き、彼女は「おじさま」が彼女に言い寄る男を次々と殺していると考え始めるのだが…」
・「通り魔」
「西脇千秋(24歳)が二歳の時、母を捨てて、家を出ていった父親が亡くなる。
千秋と母は葬儀に出席するが、そこで、父親が愛人との間につくった晴美という少女と出会う。
晴美は17歳で、このままだと高校をやめなければならず、千秋の母は彼女を家に引き取る。
当初、千秋は妹ができたようで喜んでいたが、晴美はどんどん図々しく、横柄になっていく。
また、陰でこっそり、千秋の恋人の戸田明彦に接近している様子もあった。
母親はおっとりしており、何を言っても糠に釘で、千秋はストレスをためていく。
そんな時、晴美に批判的だった、家政婦のタキが轢き逃げにあい、死亡。
その代わりに、晴美は、自分の知り合いの高野芳子という女性を家に連れてくるのだが…」
・「ポイズン ―毒薬―」
「京都に住む山口真由美のもとに、東京の警察から連絡が入る。
それは、姉のみずほが、夫の正隆を就寝中に刺殺した後、自分も胸を突いて、亡くなったというものであった。
姉は、真由美が小さい頃、両親を亡くして以来、唯一の肉親で、彼女が殺人を犯すなんてどうしても納得がいかない。
真由美は東京にある実家に住み込み、そこで姉の死の真相を知ろうと試みる。
殺された正隆の派手な女性関係…。
家に侵入して、何かを探していた、暴力団の組員…。
そして、真由美の心の底にしまわれた、ある秘密…。
姉を無理心中に追いやった理由とは…?」
・「深く長い眠り」
「18年間もの昏睡状態から回復した東山文也。
彼が18歳の時、両親の運転していた車が崖に転落し、両親は死亡、彼は昏睡状態になっていたのである。
一年間のリハビリの後、彼は、鎌倉に住む叔父宅に身を寄せる。
そこで、彼は、叔父夫婦が引き取った琴江という娘と出会う。
彼女は、彼が事故にあった時には一歳で、今は美しい娘と成長していた。
文也は、叔父宅で、叔母の姿がないことを疑問に思う。
どうやら、叔父の家族には、彼にはわからない確執があるらしい。
更に、彼は刑事から、両親の事故に不自然な点があったことを聞かされる。
事故の直前、父親が叫んだ言葉にヒントがあるようなのだが…。
20年近い時を経て、明かされる真実とは…?」
表題作の「通り魔」が最も印象に残りました。
ウォルポール「銀の仮面」に代表される「お家乗っ取り」テーマの作品ですが、痛快なラストに胸がすきます。
2020年12月24・27日 ページ作成・執筆