御茶漬海苔「砂のテレビジョン」(1985年7月20日初版発行)
収録作品
・「砂のテレビジョン」(描き下ろし)
「マンションに住む一家(両親と一人娘)。
テレビが壊れたので、父親は修理しようとしたところ、手の施しようがなくなる。
そんな時、掲示板で、中古テレビを五千円で売るという貼り紙を目にする。
階上のその部屋に行くと、老婆が彼を出迎え、大型の立派なテレビを見せる。
破格の値段でテレビを手に入れ、一家は大喜びだが、翌朝、母親が貧血で倒れ、次の朝には、娘がひどい貧血になる。
夜、父親は物音で目を覚まし、テレビのある居間に向かうと…」
・「TH・1023」(「レモンピープル」1984年3月号)
「雪山の一軒家。
少女は、逃亡中のケル人をかくまう。
ケル人は、資源確保のため、人類により滅ぼされようとしていた。
そこで、ケル人はケル星で使用される予定の細菌兵器を盗み出す。
少女はケル人を手厚く介護し、軍の追手から守ろうとするのだが…」
・「精霊島」(「レモンピープル」1984年1月号/御茶漬海苔先生のデビュー作品)
「精霊島では、精霊(しょうりょう)様に選ばれた娘は若さを長く保ち、精霊様の目を見た男はカラスになると伝えられる。
ユミは精霊様に捧げられることが決まり、夜、社にて精霊様を待つ。
精霊様の前で叫んだ一言により、彼女は、島の御婆の言う「胸がさけるほど悲しいこと」を体験することとなる…」
・「テレフォン」(「レモンピープル」1984年10月号増刊/ラストを加筆訂正)
「大学生の美香は一軒家に引っ越す。
そこでは、毎夜、二時になると、いたずららしい無言電話がかかってくる。
更に、毎晩、海の夢を見て、朝を迎える度に、身体のどこかに傷ができていた。
寝ている間に髪を切られた美香は身の危険を感じ、友人のゆかりのアパートに泊めてもらうが…」
・「クルミ」(「レモンピープル」1984年5月号)
「中学生の桑原ゆみは学校で倒れ、どこも異常は見られないのに、意識不明の状態となる。
彼女の病室に、エクソシストの男性が現れ、彼女の太腿の付け根にクルミの印を認める。
クルミは悪魔の一種で、彼女の体内に入り込もうと目論んでおり、そうなる前に、聖水で焼き払うしか、彼女を救う方法はない。
父親は娘の横で寝ずの番をするも、父親の隙をついて、クルミはゆみの下腹部に潜り込んでしまう。
彼女を救う手立てはもうないのだろうか…?」
・「最期の放課後」(「レモンピープル」1984年9月号)
「ある学園に潜入した女スパイ。
そこでは、女子生徒を性奴にしている疑いがあった。
彼女は様子を探るも、校長達に捕らえられ、マジック・ミラーで囲まれた部屋で催淫剤を飲ませられる。
彼女の運命は…?」
・「エレベーター」(「レモンピープル」1985年1月号)
「廃墟となった病院は、ゆうとユミの遊び場所。
中でも、エレベーターがお気に入り。
このエレベーターは扉だけは開閉し、二人はデパートのエレベーターを真似して遊ぶ。
だが、ある日、二人はエレベーターに閉じ込められてしまい…」
・「あなたの世界へ花束を」(「レモンピープル」1984年11月号)
「スラム病に侵された少女は兵隊に助けられる。
彼女の命を救うには、ワクチンだけでは不十分で、モスクワの病院で治療しなければならない。
しかし、少女は、捕虜にはなりたくないと拒否。
兵隊は彼女の命を救おうとするのだが…」
・「ワールブルグ号」(「レモンピープル」1984年7月号)
「二人の男が、遭難した宇宙船を発見する。
それは、三百年前に、不老不死の石と共に、宇宙で消息を絶った冒険家ワールブルグの宇宙船であった。
二人が、ワールブルグ号を探索すると、ワールブルグの娘がまだ生存していた。
彼女は宇宙服のヘルメットを取っても、死なないのだが…」
・「時計じかけの少女」(「レモンピープル」1985年3月号)
「旅館に行くために、山越えを強行した男性。
日が暮れ、途方に暮れている時、高台に屋敷を発見する。
縁側には着物姿の可憐な少女が座っており、彼は一夜の宿を乞うが、父親らしき男性に追い出される。
何とか旅館に着いた男性は、女将から、あれはキチガイ博士の屋敷で、山では若い男が何人も行方不明になっていると聞く。
少女のことが気にかかり、翌朝、男性が再び山の屋敷を訪れると…」
・「妖精の舞い降りた日」(「レモンピープル」1984年5月号増刊/大幅に描き直し)
「突如、東京に降り立った巨大ロボット。
自衛隊の攻撃も全く効かず、ロボットは破壊の限りを尽くす。
一方、東京から離れた田舎で、ある兄妹が妖精を捕まえる。
二人は、妖精を箱に入れ、家に持ち帰るが…」
・「おまけ」
御茶漬海苔先生による、ホラー映画に関するエッセー。アシスタントをしていた奥さんのコマもあります。
デビュー作「精霊島」を含む、初期のホラー短編を収録した単行本です。(もしかして、一番、最初の単行本?)
久保書店の「WORLD・コミックス・スペシャル」から出ているためか、ロ○○ン入ってるエロ・シーンが多く、エロ漫画家としての側面も窺い知ることができます。
当初から切れ味鋭い短編には類まれな才能を感じますが、本書の大半を占めるSF作品は、思い付きだけで描かれたような作品が多く、そこは残念。
全くと言っていいほど、物語の背景や設定の説明がなく、読んでいて、何のことやらさっぱりわからないものだらけです。(特に、ひどいのは「最期の放課後」「あなたの世界に花束を」「ワールブルグ号」…さっぱり、内容が掴めねェ!!)
ホラー作品は多少、説明不足でも「雰囲気」でごまかすことができますが、SFでそれをやっちゃうと「独りよがり」にしか見えないのです。
同じ久保出版からの「鏡の少女」にて、「おまけ」以外は再収録されております。
2018年7月6日 ページ作成・執筆
2023年1月31日 加筆訂正