今西亜麗「吸血鬼」(1980年1月20日第1刷発行)
収録作品
・「エミグレイション」
「謎の宇宙人との星間戦争。
人類はじり貧になりながらも、雄々しく戦う以外、道はなかった。
アンソニー・ダニエルズ空軍大尉は、ある戦闘の際、爆発に巻き込まれ、辺境の未開拓星に遭難する。
食料や空気には問題はなかったが、機体の修理も、救助を望むのにも、あまりに絶望的な状況。
彼は、オーディンと名付けたコンピューターを心の支えに、その惑星で暮らし続ける。
そのうちに、彼は惑星の風土病に侵され、皮膚が硬化していき、オーディンは彼の変化を、星の環境に合わせて進化したと考える。
オーディンのエネルギーが切れた時、一人ぼっちとなったアンソニーは、憎しみや諦観を乗り越え、惑星の環境に順応。
すっかり人間とはかけ離れた外見になるが、彼にとってこの惑星は「エデンの園」のようなものとなる。
ある日、彼の惑星に、敵のエイリアンの宇宙船が墜落する。
敵の乗務員は死に、敵の捕虜となっていた女兵士、アルテミヤ=ザクリンスカヤだけが生き残る。
アンソニーとアルテミヤは、二つのロケットの部品を使い、ロケットを修理して、この星から脱出しようとするのだが…」
・「呪われた血の末裔」
「エデュアルト=ロートリンゲンは天才ピアニスト。
彼は12歳の頃、リトアニアからドイツへと亡命してきた。
両親は既に亡くなり、身内のものは、ルーマニアの貴族の出である母親の召使い、オストロヴ夫人だけ。
彼が硬式飛行船に乗っている時、奇妙な男が彼に話しかけてくる。
男は彼のピアノの腕前を完璧と評しながらも、真理が含まれていないと指摘。
真理は永遠のもので、「選ばれた者には永遠を見出す時が必ず来る」と語る。
その後、硬式飛行船は落雷により爆発炎上し、彼一人だけが助かる。
昏睡から覚めた彼は、奇怪な幻覚に襲われるようになり、遂に、自殺を図る。
しかし、彼は吸血鬼となっており、死ぬことができない。
彼が吸血鬼として目覚めた時、飛行船で会った男が再び現れる…」
今西亜麗先生は、調べてみたら、五十嵐浩一先生の別名義ということです。
両作品とも、面白いものの、ストーリーが何度読んでも、いまいち掴めない部分があります。(私のオツムの程度もありましょうが…)
特に、「エミグレイション」のラスト付近はさっぱり意味がわかりません。
「呪われた血の末裔」も、ストーリーが薄く、想像で補う必要があるのですが、雰囲気がよく、吸血鬼ものの隠れた佳作と思います。
個人的には、主人公に想いを寄せる娘、ローレの一途さに心を打たれました。
2020年2月12日 ページ作成・執筆