風忍「バイオレンス&ピース」(1980年11月5日初版発行)

 収録作品

・「男は度胸」(「HRAVY METAL」1980年3月)
「宇宙時代、あるヤクザが、あらゆる武器やコンピューターを手に入れ、世界一強い男となる。
 しかし、心の中の不安を消すことができず、噂に聞いた「不安を消す、最高武器」を探すため、ギターを片手に旅に出る。
 旅の途中、彼の心の内側から、声が聞こえる。
 彼に話しかけてきたのは、右手に銃らしきものを持った、女性であった。
 彼女の銃から光線が放たれると、彼の意識は肉体から引き離される。
 そして、彼の頭の中にうつしだされたものは…」

・「心の内なる声を聞け!」(「SFマガジン」1978年10月増刊)
「自分の身体が宇宙船になり、口のある怪星と激突する夢。
 この夢を見た者は身体が爆発し、死者は三日で一千万人に達する。
 宇宙船が怪星にぶつからなかった人々は死から免れるが、信彦という少年だけは違っていた。
 彼は身体が一度爆発するも、目が覚めた時、もとに戻っていたのである。
 彼は、夢に出てくる怪星が全ての元凶で、これをぶち壊して、先に進まねばならないと感じる。
 この出来事は、彼の潜在意識が語る「進化」とどういう関係があるのだろうか…?」

・「宇宙に向かってとび出せない!」(「漫画アクションコミックス」1978年6月27日号)
「内気な少年、藤波明。
 彼は、いつも同じ夢を見る。
 夢の中では、想いを寄せる同級生の桜がプリンセスで、自分は彼女を悪人から守るスーパーヒーロー。
 しかし、ストーリーは全く前に進まず、戦いばかりが続くのであった。
 ある日、現実の彼と、夢の中の彼が入れ替わる。
 五日後、彼は、行ってはいけないという心の声に逆らい、学校に向かうのだが…」

・「絶滅者 THE ANNIHILATOR」(「漫画ゴラク」1977年2月)
「二年間の昏睡状態から目覚めた、元・刑事。
 彼の治療にあたった医師は彼に拳銃を渡し、政府の「0(ゼロ)計画」を潰すよう頼む。
 「0計画」は、超能力者達が透視能力を使って、犯罪を防ごうというものであった。
 だが、次第に過激化し、些細な暴力や頭で暴力を空想しただけでも警察に射殺されるようになり、国は荒廃する。
 彼は、恋人が「0計画」に参加していたことを思い出し、その本部に向かう…」

・「SUPER TIME WOMAN 超高速の香織」(後藤俊夫・原作/「週刊少年マガジン」1978年9月3日号)
「香織は、マンションで加速剤の実験をする。
 人体実験は成功し、通常の時間の数千倍の速さで動くことが可能になる。
 その時、彼女は、炎上した戦闘機がマンション目がけて、突っ込んでくるのを目にする。
 赤ん坊の俊一をカプセルで保護し、彼女は「2.2秒」以内にマンションから脱出する方法を探るのだが…」

・「ガバメント(軍用拳銃)を持った少年」(「マンガ少年」1977年9月)
「気弱な少年、大島光一が、空離巣(そらりす)中学校に転校してくる。
 転校初日から教師の跳び下り自殺を目の当たりにして、彼は気絶。
 保健室で目覚めた時、彼の前には白石静香という女生徒がいた。
 彼女は他の六人の仲間と力を合わせて、彼をこの学校に呼んだという。
 その目的は「やつ」を殺すことで、教師の自殺もそいつの仕業らしい。
 静香は彼に「コルト・ガバメント」を渡すが、その時には学校中の教師に異変が起きつつあった。
 彼が立ち向かうことになる「やつ」の正体は…?」

・中子真治「解説/風忍について、どうしても書いておきたいこと。」

 傑作「地上最強の男・竜」で有名な風忍先生の短編集です。
 怪奇マンガというよりも、「インナー・スペース」をテーマにしたSF作品ではありますが、そんな狭い枠にとらわれるような作品ではありません。
 風忍先生の描く「インナー・スペース」はとことん広大で、個性的、そして、破天荒!!
 ただ、私は、風忍先生の作品(より正確には、ほぼ全てのアーティストの作品)を前にしては、知識・感受性共にあまりに貧弱で、途方に暮れるばかりです。
 知識を求める方は、宇田川岳夫氏「マンガゾンビ」(太田出版/pp116〜123)をお勧めいたします。(1997年発行の本なので、情報としては古いですが…。)
 最近、あまり噂を聞きませんので、風忍先生がもっと多くの人に読まれ、語られるようになるといいなあ。

2019年8月25日・9月5日 ページ作成・執筆

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