沖田龍児
「ヤドリギサマ@」(2023年5月10日初版発行)
「ヤドリギサマA」(2023年9月10日初版発行)
「ヤドリギサマB」(2024年2月10日初版発行)
「ヤドリギサマC」(2024年8月10日初版発行)



単行本@(「漫画ゴラクスペシャル」2022年10月〜2023年2月)
・「第1話 南の孤島」
「沖那和県南米島の南二キロにある宿り気島。
 ここは貝殻の形をした小さな無人島で、神秘的な「青い洞窟」は観光名所であった。
 今、二隻のボートが観光客を向けて宿り気島に出発しようとする。
 水先案内人の代田保志は不吉な前兆を感じ、親方にツアーを中止するよう言うのだが…」
・「第2話 惨禍」
「親方と代田は観光客を青い洞窟の奥に案内する。
 奥にはツアーの目玉、宿り気島の御神体、ヤドリギサマがあった。
 これはこれは石筍が巨大な石柱になったもので、バンザイをして天井を支えているように見える。
 ガイドが宿り気島の歴史について話し終えた時、洞窟が揺れているような気配がして…」
・「第3話 みんな死ぬ」
「突如、発生した地震により、洞窟は崩落。
 生き残ったのは、二十一人のうち、十人だけであった。
(その十人については以下の通り。
 間宮勇樹(28歳)〜本作の主人公。藤崎まりあと付き合い始めて半年。この旅行でプロポーズをするつもりだったが…。
 藤崎まりあ(25歳)〜本作のヒロイン。中学校の時、いじめられたトラウマがこの事故で甦り…。
 仲村〜代田保志の同級生。保志をいじめていた。
 美空(みく)〜仲村の妻。
 森光彦(40歳)〜公務員。ちょっとヒステリック。
 森凜子(33歳)〜光彦の妻。光彦とは結婚五年目だが、夫婦危機の真っ最中。
 町田卓也〜東京の大学四年生。おデブ。宮本千秋とカップル。
 宮本千秋〜東京の大学四年生。とっても明るく、ムードメーカー。いい娘だったのになあ…。
 黒衣の娘〜無口でクール。何を考えているのか謎。「第10話」で素性が明らかになる。
 代田保志〜でくのぼう・タイプ。どもりやチック(?)あり。根は悪くないんだけど…。)
 しかも、代田保志は親方を亡くして、半狂乱になる。
 彼はこの地震は自分のせいだと言うのだが…」
・「第4話 歪む関係」
「生き残った人々は混乱している代田保志に詰め寄り、責め立てる。
 藤崎まりあは間宮勇樹に彼を守るよう頼むも、勇樹は決して行動を起こそうとはしない。
 そんな時、仲村が保志を引っぱたき、落ち着かせる。
 仲村は保志に船着き場までの案内を頼むのだが…」
・「第5話 ぼっち」
「人々は崩れた洞窟を保志について進む。
 再び地震に襲われるも、それによって順路のプレートを発見。
 ようやく船着き場へと着くのだが…」
・「第6話 抜け道」
「船での脱出は不可能であった。  更に、仲村の仕打ちに耐えかね、保志は洞窟から外に出る道を教えることを拒否する。
 更に暴力を振るおうとする仲村から保志をかばったのは、まりあであった。
 仲村も落ち着きを取り戻し、保志に皆を助けるため、しっかりするよう諭す。
 すると、保志は奥にまだ生き残りがいるようなので、また洞窟の奥に戻ろうとする…」
・「第7話 不穏」
「まりあは保志と共に洞窟の奥に向かう。
 勇樹は彼女を放っておけず、後を追うが、彼女は冷たい態度で彼の優柔不断をなじる。
 二人の間に緊張が走った時…」
・「第8話 宿り気」
「保志・まりあ・勇樹のいない間、残りの皆は自己紹介をしていた。
 そこに白い仮面をつけ、両手に蛮刀を持った半裸の男が現れ、宮本千秋を殺害。
 皆はパニックになり、逃げだすが、その場に黒衣の娘だけが取り残され…。
 その頃、まりあと勇樹は保志から何故、ヤドリギサマが彼を怒っているのか理由を聞く。
 保志は中学校の頃から一人でこの島を訪れていたが、ある時、洞窟の中に生活用品が揃っている部屋を見つける。
 そこは実に快適で、彼は部屋をいじったり、魚やフルーツを何度か食べてしまう。
 それが原因で、像からヤドリギサマの魂が抜けだし、人間にとり憑く悪い神様になったと言うのだが…」
・「第9話 アイツ」
「勇樹たちのもとに仲村が息せき切って駆けてくる。
 彼の話を聞き、保志はヤドリギサマの仕業だと恐怖に慄く。
 しかし、まりあだけはどこか興奮したような態度を見せる。
 そこに他の皆もやって来て…」
・「第10話 呪文」
「怪人に殺されたはずの黒衣の娘は生きていた。
 彼女の名は園田あかり、大学院生でいろいろな島の歴史や伝承を研究しており、今回、宿り気島に興味を持ち、このツアーに参加する。
 この島には災いを避ける古くからの言葉「ヤドリギサマヌナミダ」があり、彼女はこれで怪人から無事に逃れたという。
 また、文献によると、この島にはヤドリギサマに仕える番人がおり、ヤドリギサマに生贄を捧げるため、大小の刀で獲物を狩っていたというのだが…」

単行本A(「漫画ゴラクスペシャル」2023年3月〜7月)
・「第11話 夜」
「生き残った人々は洞窟での最初の夜を迎える。
 絆を取り戻した者、破局が訪れた者、愛する者を失った者…。
 その中で、勇樹は今までの自分の不甲斐なさを反省し、まりあを守る決意を固める。
 彼は見張りに立っている保志に声をかけ、見張りの交代を申し出る。
 一方で、まりあの視線は…」
・「第12話 焦燥」
「保志は生き残りがいると言い、皆で岩を動かす。
 すると、岩の隙間に男女が三人(加納、理奈、留美)が閉じ込められていた。
 この三人を加え、一行は洞窟から出る道を進む。
 しかし、洞窟の崩落のために迷ってしまい…」
・「第13話 とめどなき嫌悪」
「洞窟での二日目の夜を迎える。
 脱出まで何日かかるかわからず、皆、とりあえず、手持ちの食料を出し、分配することとなる。
 しかし、町田卓也だけは食料をわけることを拒否する。
 そんなギスギスした状況の中、保志は一日でも早く脱出するため、一人で脱出ルートを探しに行く。
 まりあは彼について行こうとし、勇樹は彼女を制止するのだが、彼女から意外な言葉が…」
・「第14話 略奪」
「保志のいない間、勇樹は見張りに立つが、うっかり寝てしまう。
 その間に、町田卓也は何者かに額を殴られ、食料の入ったリュックサックが行方不明になる。
 疑いは加納にかかるが、彼は寝たふりをしているまりあが犯人だと言う。
 まりあは真犯人を見たと話すのだが、それは…」
・「第15話 化けの皮」
「疑いをかけられた加納は皆のもとから立ち去り、結局、食料は見つからない。
 絶望感が漂う中、園田あかりが保志に話しかけてくる。
 彼らはお互いについて打ち明け合うが、その横でまりあは二人の会話に聞き耳を立てていて…。
 一方、仲村は美空に言われて、食料を捜しに行く。
 洞窟を進んだ先に…」
・「第16話 渇き」
「リュックサックを奪った犯人はやはり、加納であった。
 仲村は名誉挽回のため、リュックを取り戻そうとするが、格闘技をやっていた加納にボコボコにされる。
 しかも、その場に美空が仲村を捜しに来て…」
・「第17話 獣欲」
 その頃、勇樹はまりあとあかりに挟まれ、ビミョ〜な立場にいた。
 まりあは彼と恋人であることをあかりに見せつけ、彼女を追い払う。
 そして、まりあは学校でずっといじめにあっていたことを彼に打ち明ける。
 社会人になってからもその辛さは続いていたが、この洞窟の事故の後、彼女は「強くなってる気がする」と話す。
 まずで彼女の「体内に新しい何かが入ってきたみたい」に…」
・「第18話 支配宣言」
「保志はヤドリギサマの御神体まで戻り、方向感覚を取り戻す。
 だが、外は雨で、洞窟内は水位が上がり、このままでは通れる道も通れなくなる。
 急いで皆のもとに戻ろうとしていると、彼は昔、よく来ていた部屋を見つける。
 そこには食料がたくさんあり、彼は皆のもとに持って行こうとするが、部屋の外には白い仮面の男が…」
・「第19話 外道の君臨」
「その頃、水音を聞きつけ、勇樹と森光彦は飲料水を捜しに行く。
 それと入れ替わるようにして、加納たちが皆のところに戻ってくる。
 彼は男連中がいないことをいいことに、女性たちに対しその醜い欲望を露わにする…」
・「第20話 太陽の光」
「加納に対し、女性たちは逆らうも、今、ここで「権力」を持っているのは彼であった。
 あかりは最後まで反抗心を崩さないが…。
 その頃、勇樹と森光彦は岩壁に外界に通じる隙間を見つける。
 また、保志も顎まで水に浸かりながら、食料を皆に届けるべく、進んでいた…」

単行本B(「漫画ゴラクスペシャル」2023年8月〜11月)
・「第21話 搾取される者」
「加納は今まで生意気な態度を取ってきたまりあを別の場所に連れて行こうとする。
 あかりは阻止しようとするのだが、加納を絶対視する理奈と留美が…。
 一方、勇樹と光彦は白い仮面の男と遭遇する。
 二人はあかりに教えてもらった呪文を思い出そうとするのだが…」
・「第22話 逃げ場なし」
「まりあは加納にレイプされそうになる。
 しかし、生命の危機を目前にして、彼女のリミットが外れる。
 彼女は力を持ち、「奪う側」に立つと加納に宣言する…」
・「第23話 激情」
「まりあが窮地に陥っているところに、保志が現れる。
 加納は保志を言いくるめて、自分の子分にしようとするが、まりあから警告され、保志は加納を連れて皆のところに戻ろうとする。
 加納は保志を暴力で押さえつけようとするが、まりあを殴ったことで保志の怒りが爆発し…」
・「第24話 いざない」
「加納は崖に転落。
 保志は急いで彼を助けに行こうとするが、まりあに止められる。
 彼女は罪の意識に苛まれる保志に自分を卑下しないよう言い、彼は「強い人」だと励ます。
 そして、二人で手を取り合って「本当の自分」になる方法を彼に教える。
 それに必要なのは自分らしく輝ける場所なのだが…」
・「第25話 籠絡」
「まりあは自分の中にヤドリギサマの魂が宿っていると保志に話す。
 彼女の豹変を考えると、そう考えざるを得ず、保志は彼女に対しひれ伏す。
 そして、自分が十歳の時に漁師の父親が死んだこと、17歳まで母親のDVに怯えてきたこと、母親が男と逃げて以来、一人で頑張って生きてきたことをまりあに打ち明ける。
 まりあはここでなら彼が手に入れられなかった「家族と普通の幸せ」が手に入ると彼に告げ…」
・「第26話 土下座」
「皆のもとにまりあと保志が戻ってくる。
 まりあは保志が手に入れたフルーツを一人ずつ渡していく。
 だが、徐々に保志は彼女に違和感を覚え始め…」
・「第27話 私は優しい」
「勇樹と光彦は怪人から逃れたものの、洞窟内で迷ってしまう。
 二時間以上もさまよった後、二人は部屋を見つける。
 そこは人が明らかに生活しており、テーブルの上には割れた白い仮面があった。
 あの怪人はモンスターではなく、生身の人間で間違いない。
 しかも、壁には怪人の持っていた刀が飾られていて…」
・「第28話 豹変」
「まりあは皆に加納の死を明かす。
 それを知った仲村は今度は自分が保志を服従させ、ここのボスになろうとする。
 過去を繰り返そうとする保志にまりあが「変わるのは“今”よ」と告げると…」

単行本C(「漫画ゴラクスペシャル」2023年12月〜2024年5月)
・「第29話 女王」
「保志は自分の本当の力に気付く。
 呆然としている保志の横で、まりあは自分が「女王」として宿り気島を統治することを宣言。
 理奈はまりあを「イカれ女」呼ばわりして楯突くのだが…」
・「第30話 板挟み」
「暴走するまりあをあかりは説得しようとするが、彼女にはもう通じない。
 その時、勇樹と光彦が皆のもとに戻ってくる。
 勇樹はその場の異様な空気を訝しみ、あかりに聞くと、まりあはもう以前の彼女ではないと告げられる。
 彼は戸惑いながらも、抜け道を発見したことを皆に話し、保志に協力を求めるのだが…」
・「第31話 私の居場所」
「まりあはずっと『私が安らげる本当の居場所』を捜し続け、ようやく発見した。
 ここから出ないと主張する彼女と勇樹は話し合おうとするも、彼女は彼の「偽善」を暴き立てる…」
・「第32話 ボクは偽善者」
「まりあの言葉に勇樹は衝撃を受け、自分が本当に彼女を好きだったのか自問する。
 すると、突如、あの怪人が現れる。
 怪人は勇樹たちが隠した刀を捜していた。
 丸腰ではあるが、怪力のため、うかつに近寄れず…」
・「第33話 番人の真実」
「怪人がまりあに掴みかかろうとする寸前、保志が戻ってくる。
 彼の手には先程、船着き場で見つけた刀が握られていた。
 保志は怪人の顔を見て、驚愕する。
 怪人の正体とは…?
 保志は怪人を止めている間、皆に逃げるよう言うのだが…」
・「第34話 地図」
「まりあは怪人を洗脳し、死に追いやる。
 彼女は怪人から宿り気島の地図を手に入れた後、次は保志の洗脳に取り掛かる。
 勇樹たちはまりあから地図を奪おうとするのだが…」
・「第35話 子作り」
「まりあの目的は島の再興。
 まりあと保志によって、男女二人ずつ、小さな洞窟に監禁され、子作りを命じられる。
 その頃、南米島では元・ツアー会社の誉という老人が観光客の救助のため、宿り気島に向かおうとしていた…」
・「第36話 本性」
「勇樹とあかりは真っ暗の洞窟へと投げ込まれていた。
 勇樹は絶望し、弱い自分を責める。
 そんな彼にあかりはヤドリギサマなど存在しないと断言するのだが、だとすると、まりあの豹変は一体…?
 この洞窟で明らかとなった「隠された真実」とは…?」
・「第37話 脱出」
「勇樹の機転で二人は洞窟を脱出し、誉老人と出会う。
 二人は残りの皆も助け出し、ボートへと向かうが、出口を目前にして彼らの前にまりあと保志が立ちふさがる…」
・「最終話 宿る想い」
「誉老人は保志とまりあに帰るよう言うも、まりあは断固拒否。
 彼女は保志に皆を止めるよう頼むが、保志の決断は…?
 そして、二年後…」

 異色作です。
 前半は洞窟からの脱出を図るサバイバル・ホラーですが、後半はヒロインの狂行を描いたサイコ・ホラーとなり、予想外の展開の連続!!
 このヒロインをどう感じるかによって作品の評価が変わってきますが、個人的には、ヒロインの心理の微妙な変遷を的確に描写しており、説得力はあると思います。
 また、それぞれのキャラ設定も練られていて、人間ドラマとしてもしっかりしている点も読みごたえにつながっております。
 絵は幾分クセがあるものの、丁寧な仕事ぶりで、そこもポイント高めです。
 ただ、個人的には「スラッシャー」の要素が意外と薄かったのが残念でした。(仮面の男、さほど大暴れせず、残酷描写も少ないです。)
 他にも幾つか気になる点はあるものの、それを差し引いても、佳作と評価できると思います。
 ただし、単行本の表紙がイロモノっぽくて(注1)、書店で食指が動かなかった人が多かったかも…。

・注1
 こういう顔が幾つも合体している絵を見ると、ロサンジェルスのバンド、LOVEの超名盤「FOREVER CHANGES」を思い出します。
 そのジャケットに影響を受けたのか、フロリダのブルース・バンド、BLUES IMAGEの2ndアルバム「OPEN」(注2)もメンバーの顔がごちゃごちゃとひとまとまりになっておりました。
 BLUES IMAGEの方が雑然としている分、「ヤドリギサマ」に近いかな。

・注2
 このアルバム収録の大ヒットシングル「RIDE CAPTAIN RIDE」、めちゃくちゃ良いよ!!
 たまにこれだけ延々と聴いてます。

2025年7月1〜4日 ページ作成・執筆

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