好美のぼる「妖怪祭りA」(1971年9月1日発行)



 収録作品

・「水の妖怪」
「旱魃に襲われた村。
 田畑は干上がり、村人達は雨が降るのを待つばかり。
 村の中でただ一つ、魔性ヶ渕のみ満々と水をたたえていたが、昔からここの水は取ってはならないと言い伝えられていた。
 そして、淵の水を絶やすと、村に災害が起こると言われ、村人は誰もこの淵に近寄ろうとはしなかった。
 だが、勝気な娘、妙子は、両親の苦労を見かねて、兄の徹と共に、淵の水をこっそりくむ。
 ある日、また淵の水を取りに来た兄妹の前に、淵に住む水幽霊が姿を現わす。
 水幽霊は、兄妹に今まで淵から盗んだ水、バケツ十八杯分を返すよう要求。
 妙子はそんなにたくさんの水を用意できないことを悟ると、「毒を食らわば皿まで」とばかり、淵の水門を開けて、村に水を流そうとする。
 しかし、もう少しのところで、水幽霊に邪魔される。
 それでも、くじけず、妙子は、兄の徹を使って、村長の蔵から水幽霊に関する古文書を盗み出させる。
 担任の女教師に古文書を解読してもらうと、そこには平家の落人について書かれていた。
 妙子と女教師は、魔性ヶ渕の秘密を暴くため、夜、淵の水門を開くのだが…」

・「猫の妖怪」
「上越の山々に囲まれた、山奥深い、小さな温泉郷。
 奥利根の宝川温泉に、老舗旅館の奥利根館があった。
 ある日、旅館の娘、まゆみの飼っている猫の玉が二匹の子猫を産む。
 まゆみは大喜びだったが、隠居をしている祖父は血相を変えて、子猫を捨てるように言う。
 過去の火災により、奥利根館は猫を三匹飼うと、火事になるとのジンクスがあった。
 両親に諭され、まゆみは泣く泣く子猫をよそにやる。
 子猫と別れる時、まゆみは子猫達に、毎週金曜日の正午、村はずれのお地蔵様の辻で母猫と会うように伝える。
 そして、迎えた金曜日、まゆみと兄の久夫は、母猫と子猫達が遊び戯れる様に心から和むが、別れがやっぱり寂しい。
 涙ぐみながら、まゆみは次の金曜日を心待ちにする。
 その頃、奥利根館は新しい温泉をもう少しで掘りあてそうだった。
 ライバル旅館の宝川旅館は、汚い手口で工事の妨害をしようとするが、久夫により撃退される。
 だが、木曜日の夜、奥利根館は不審火により全焼。
 まゆみ、まゆみの両親、玉は焼死、まゆみの祖父は発狂してしまう。
 金曜日、辻のお地蔵様の前で、久夫は涙にくれながら、放火犯を捕まえることを誓う。
 そんな彼を見つめる、まゆみと玉の幽霊。
 まゆみと玉の霊は、放火した犯人を突き止めるべく、宝川旅館の主人や番頭の前に現れる。
 奥利根館に火を付けた犯人は一体誰…?」

 貸本として出版された「水幽霊」と「猫魔の辻」を一冊にまとめたものだと思います。
 ただ、貸本の方は持ってなく、ちゃんと確認を取ったわけではありませんので、間違っている可能性もあります。
 「水の妖怪」は、ラストが意外やバッド・エンド。
 結局、「触らぬ神に祟りなし」ってことなのでしょうか?
 「猫の妖怪」は、典型的な「好美のぼる怪談」だと思います。
 ですが、ラストをムダに捻って、真犯人を意外な人物にしたために、作品がぶち壊しになってしまいました。
 ちょっと、これは納得できないぞ…。
 まあ、この作品には、好美のぼる先生の描く「ネコミミ少女」が出てくるので、よしとしましょう。
 今現在から見ても、「萌え」ではないでしょうか?(一体どのくらい昔から「ネコミミ少女」って描かれているのか、誰か検証してみませんか。)

2017年9月27日 ページ作成・執筆

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