白川まり奈「妖霊島」(1973年2月23日発行)
「夏、ヒロイン(最後まで名前わからず)と、その友人、柳真理は平家物語の史跡を巡り、最後に下関を訪れる。
壇ノ浦の海辺で、安徳天皇の絵を売る老人と出会った二人は、その老人の勧められ、老人の住む島に小舟で運んでもらう。
その島は無明島といい、地図にも載っていない小さな島であった。
老人の姉を名乗る尼に二人は尼寺に案内される。
しかし、その尼寺は、平安時代の華麗な寝殿造りの建物であり、手入れされた庭もあった。
島には平家一門の墓や当時の鎧等があり、二人はいつまでも滞在してよいと言われる。
だが、島には年寄りの姿しかいなく、カブトガニを生で貪り食う、謎の男もおり、どうも雰囲気が怪しい。
また、柳真理は櫃にあった着物を着て以来、どこか人が変わってしまう。
老人のアトリエで源氏一族が滅亡する絵を見た後、二人は尼に安徳天皇の墓に案内される。
実は、壇ノ浦で入水した安徳天皇は身代わりで、本物の安徳天皇は、漁民になりすました平家の侍達と共に、この島に身を隠れ住んでいたのだと言う。
そして、世に出ぬまま、島に住み続けた結果、この島の住民は、安徳天皇と平家の侍の子孫だけなのであった。
尼から一生この島から帰れないと告げられ、二人は島から脱出を図るものの、船は壊され、そのうちに嵐となる。
途方に暮れる二人に、尼は安徳天皇の直系である帝の花嫁に選ばれたと告げるのであった…」
知られざる「傑作中の傑作」、奇跡の作品です。
「耳なし法一」をはじめ、平家一門の亡霊を扱った怪談は多いですが、その中でも、飛び抜けた破天荒さです。
また、破天荒さの割に、ストーリーに破綻はほとんどないところも、かなり凄いです。(注1)
そして、このマンガ、とっても面白いんです!!
ミステリー、サスペンス、ホラーの要素が絶妙にバランスが取れていて、最後の最後まで飽きさせません。
そして、驚天動地のラスト…。
袖に「私は小さい頃から、人を驚かすのが、ただ一つの楽しみでした。」と白川まり奈先生の文章がありますが、まさか、そう、来るかっ〜!!
あと、郷ノン(「魔女っ子メグちゃん」)似の柳真理も、ストーリーにうまく絡んで、印象的でありました。
と、ごちゃごちゃ書きましたが、復刻されて、皆が簡単に読めるようになれば済む話なのであります。
このような駄文でも、いろいろな方の目に触れ、復刻に結びつくようなことがあれば…と祈ってやみません。
・注1
でも、やっぱり無理があるところがちらほら…そこはご愛敬ってことで。
ラスト付近の取って付けたような島の説明もちょっと苦しいかな。
・備考
軽い水濡れの痕あり。湿気のためか、本編に軽い歪み。
2017年4月22日 ページ作成・執筆