坂上泰夫「顔なし姫」(220円/1965年3月24日発行)

「旅商人の六兵エは洗馬(せば/長野県塩尻市の一地区)の宿から木曽福島(長野県南西部)へ向かう途中、雨に降られる。
冷雨に濡れ、高熱に襲われた彼は、山中に迷い込み、朦朧とした意識のまま、山小屋に辿り着く。
そこには、若く美しい女性が住んでおり、山に狩りに出かけた夫の帰りを待っていた。
何故、こんな山中に斯様に美しい女性が住んでいるのかと六兵エが問うと、女は「自分の顔がない」と答え、身の上を話し始める。
彼女は三条(越後国?)四万石の姫であった。
彼女が十六の時、爺の作左エ門は、水面に映る、彼女の顔が血まみれなのに気が付く。
よくよく見ると、その顔は、姫の母親、秋の方が斬殺された時の顔にそっくりであった。
姫が幼い頃、秋の方は、殿を毒殺しようとしたかどで手討ちにされ、侍女達も死罪、そして、姫は作左エ門に預けられる。
秋の方の怨霊を目にして、作左エ門は、殿の毒殺未遂事件を深く考えているうちに、殿の毒見役、五郎太が虚偽の報告をしたことを見抜く。
だが、過って彼を殺してしまい、姫に書置きを残し、作左エ門は自刃。
一方、姫が母親の死の秘密を知ったため、家老の十左エ門と、殿の側室は、姫の暗殺を目論む。
何故なら、姫の弟の鶴太郎は、殿の子ではなく、二人の間にできた不義の子供だったからである。
しかし、姫の顔が全く別人に変わり、姫は牢へぶち込まれる。
姫の顔は変わったり、もとに戻ったりを繰り返し、十左エ門はこれを利用して、姫に殿殺しの濡れ衣を着せる。
家老は仙十郎に、姫をどこかの山中で葬るよう命じるのだが…」
・備考
カバー痛み、特に背表紙。本体、湿気による歪み大。前の見開きののど、破れ。
2019年12月23日 ページ作成・執筆