坂上泰夫「怨霊試合」(220円)
「寛文三年(1663年)九月。
福知山城内にて福知山剣術指南役、中山重蔵と富田流の名手、鐘巻自斉との試合が行われる。
結果は引き分けとなるが、その夜、中山重蔵は帰宅途中に何者かによって斬殺される。
下人の佐平によると、闇討ちした相手は黒頭巾をかぶっていて、何者かわからないとのこと。
だが、犯人はどう考えても鐘巻自斉以外に考えられず、急遽、重蔵の弟の仙三郎と妹の小夜は兄の仇を打たねばならなくなる。
だが、仙三郎は武術には興味がなく、学問肌で、この二人では鐘巻自斉に勝つことは到底無理であった。
そこで、小夜は宿で鐘巻自斉の寝込みを襲い、彼女が鐘巻に抱きついている間に、仙三郎に斬るよう言う。
しかし、仙三郎は斬ることができず、更に、小夜は片目を斬られて、失明する。
自分の不甲斐なさに仙三郎は意気消沈するも、仇を討つまでは故郷に戻れず、殿からもらった路銀を使って人を雇い、鐘巻を討とうとする。
ところが、鐘巻は名の知れた武芸者のため、全くうまく運ばない。
そのうちに、仙三郎は人を初めて殺し、大人しかった性格が徐々に荒廃していき…」
時代劇によくある「仇討ち」の悲劇をテーマにした作品です。
冒頭でおおよその予想はつくものの、つまらないプライドのせいで弟と妹は人生を潰されておりますので、これはかなり気の毒…。
ホラー的な描写は全くないままストーリーは進行しますが、最後の15ページでタイトルの「怨霊試合」をしております。
にしても、幽霊同士が試合するのはいいけれど、幽霊って剣で斬れるのか?
・備考
ビニールカバー貼り付け。背表紙の下部に「276」と赤ペンで書かれた紙が貼り付け。糸綴じあり。巻末のページにスタンプや書き込みあり。
2025年1月11日 ページ作成・執筆