伊東紀人「五人囃子の怪」(130円/1959年5月5日発行)
「江戸。
もうすぐ三月の初節句を迎えようとする頃、将軍家の姫君、葵姫の縁組が決まる。
相手は伊勢国水川藩十万石の河内直安の御子息、鶴丸であった。
本来は姉の八重姫が嫁ぐはずであったが、父親は葵姫の方を高く買い、八重姫の嫁ぎ先は岩代国前島藩五万石の石見竹太夫になる。
この縁組が決まって以来、葵姫は八重姫側の南田佐賀守の一味に命を狙われる。
若年寄の上月新左衛門が夜道で暗殺され、また、葵姫のお屋敷が賊に襲われた際、姫のお付きの爺、菊沢六太夫も殺される。
初節句の前日、葵姫のもとに雛人形が届けられる。
作ったのは菊沢六太夫の息子、本多比山で、実に見事な出来ばえであった。
しかし、南田佐賀守は五人囃子の中に菊沢六太夫の怨霊を目にし、本多比山を斬る。
以来、南田佐賀守の一味の前にはお囃子人形と共に亡霊が現れ…」
お家騒動にまつわるサスペンスに怨霊譚が捻じ込まれるのですが、亡霊は雛人形のお囃子人形(音楽付き)と一緒に現れ、ヘンテコな味わいです。
恐らく、五人囃子の人形を操っているのは本多比山ですが、彼についての説明がほとんどなく、そこが説得力を欠く原因になり、惜しいです。
でも、怨霊が現れるシーンは雰囲気があり、ラストの船上でのシーンは実におどろおどろしく、かつ、スペクタクルで素晴らしい。
B6サイズの太平洋文庫ではなかなか楽しめた作品でした。
・備考
状態悪し。カバーぼろぼろ。本体が割れまくって、表紙と本文が外れかかり。
2026年3月27日 ページ作成・執筆