湧井和夫「怪談暗闇双紙」(170円/1962年9月17日発行)
「村井長庵は『医は仁術』が口癖の貧乏医者。
だが、その本性は金のためならどんな悪事もいとわない藪医であった。
彼は義弟(妹、そよの旦那)の重兵エが娘を売った五十両に目を付ける。
重兵エ夫婦は長患いと凶作続きのため、田畑を失い、娘の絹は薬代のため、その身を売ったのであった。
娘を見送った帰り、重兵エは長庵の家に寄り、朝の六つ(午前六時)に発つと話す。
長庵はわざと早い時間に重兵エを起こし、暗い中、家路に向かう彼を襲って殺害。
しかも、殺害現場には長庵のもとに通っていた浪人、藤掛道十郎の傘を落としておいて、彼に濡れ衣を着せる。
一方で、長庵は伊勢屋の息子、千太郎もペテンにかける。
千太郎は絹に惚れており、彼女を見受けするための五十両を店の金の横領して用意する。
だが、長庵は預かった五十両を知らぬ存ぜぬで通し、千太郎を追い出す。
このまま、長庵の思うどおりに行くかと思いきや、入墨者(前科者)の三次が彼の悪行を知り強請る。
ところが、悪事にかけては長庵の方が上手で、長庵は三次に妹のそよを殺すよう強要する。
長庵の悪事の果てに…?」
ストーリーはまあまあ面白いものの、救いようのない話です。
長庵に関わった人間は皆、非業の死を遂げており、長庵も別に怨霊にとり殺されるわけではないです。
こういう作品を読んで思うのは、幽霊の不甲斐なさ。
被害が拡大する前に、幽霊にはどんどん活躍して、悪者を阻止して欲しいものです。
まあ、それができれば、世の中、これ程、悲惨が溢れることはないのですが…。
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり(頑張って剥がしました)。ビニールカバー貼り付けによる本体の歪み。前後の見返しのノドに紙テープで補強、並び、スタンプ押印。
2024年6月26日 ページ作成・執筆