湧井和夫「凶道」(1960年12月10日発行/150円)

「江戸。
真悟は、友人の大次郎の様子が気になっていた。
婆やによると、何か神信心をしているらしく、その夜も妹の絹江と共に、堀留の石坂屋に行ったという。
だが、石坂屋では、誰も来ていないと門前払い。
新吾が石坂屋に忍び込むと、ガマや蛇、犬が集められ、人間のものらしき血だまりがあった。
大次郎を見つけ、真悟は帰るよう諭すが、今夜は大事な会合があると聞き入れない。
真悟は彼を気絶させ、家へと連れ帰る。
真悟の父は、大次郎がその星まわり故に、凶道者(邪教の信者)に見込まれたと見抜く。
その凶道者は頼豪院怪玄といい、奇妙な呪術を使って、大次郎に執拗につきまとう。
真悟と彼の父親は大次郎を守り、その野望を食い止めようとするのだが…」
「太平洋文庫の良心」だと私が勝手に考えている湧井和夫先生。(注1)
怪奇マンガの佳作を幾つか描かれておりますが、1960年に「オカルト漫画」の元祖と呼ぶべき、快作がありました。
「邪教と対決する」ストーリーで、面妖な邪神、子供の生首を捧げた祭壇、邪教信者が踊り狂う儀式、数珠でつくった結界、お守りや御仏水で悪霊と対決と多彩な要素がてんこ盛りです。(しかも、176ページというボリューム!!)
そして、ラストには阿弥陀如来様まで登場!!
「エクソシスト」以前に、独自な「和風オカルト・ホラー」が存在していたことは、まさに新鮮な驚きでありました。
更なる発掘が望まれます。

・注1
実は、益子かつみ先生の弟さんです。
貸本漫画以降も、青年誌やエロ漫画雑誌で手堅く活躍しておりました。
ネットで調べたところ、2020年7月6日に93歳で亡くなられたとありましたが、浪曲作家の肩書がついておりましたので、同一人物なのかどうかは不明です。
・注2
原作があると思われますが、確認できておりません。
山田風太郎とか?
・備考
パラフィン紙、剥がし痕あり。カラーページ、綴じ金外れ。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2021年4月25日 ページ作成・執筆