坂上泰夫「妄者殺法」(1964年3月23日発行/200円)



「夏目新三郎は甲源一刀流秋山道場の若きホープ。
 ある夜、師匠の娘の千鶴と六所明神に参った帰り道、彼は森の中で人の悲鳴を耳にする。
 そこでは三人の侍が一人の老人を刀で脅し、問い詰めていた。
 新三郎は老人を助けようとして、侍たちと勝負する。
 三人の侍はいずれも腕の立つ者ばかりで、二人までは倒すものの、三人目で相討ちとなる。
 死んだはずの新三郎であったが、暗闇の中で美しい姫君と出会い、目覚めると、見知らぬ屋敷で介抱されていた。
 彼は秋山道場に帰るも、姫のことが頭に焼き付いて忘れられない。
 しかし、姫に会いに六所明神の森の屋敷に行っても、なかなか会うことがかなわない。
 ある時、彼は自分が人を斬った時にだけ姫に会えることに気付く。
 彼は夜ごと、人を斬るのだが、斬られた人物は皆、ある出来事に関係があった。
 一方、新三郎の師匠は彼の異変に気付き、行方をくらました彼を捜し、六所明神の森に出かけるのだが…。
 新三郎が恋焦がれる姫の正体とは…?」

 坂上泰夫作品の中でも最も面白い一冊だと思います。
 ストーリーに大きな破綻はありませんし、構成もすっきりしていて読みやすく、(坂上泰夫先生の絵にしては)怪奇ムードも十分。
 太平洋文庫の貸本マンガの中では佳作と言っていいでしょう。
 あと、表紙のイラスト、いいなあ。(絵師が気になります。この御方が漫画を描いてくれてたらなあ…。)

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。背表紙上部に小裂け。糸綴じの穴あり。前後の見返しのノドに紙テープにて補強。pp56・57、食べカスが挟まって剥げ。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2024年5月30日 ページ作成・執筆

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