堀万太郎「疾風千手狸」(130円)



「下野(しもつけ/栃木県)の黒羽城一万二千石。
 城主、大関増高は、上様の前で自慢をしたばかりに、千手狸の毛皮を作らねばならなくなる。
 早速、国家老に急使を出し、国家老は武術指南役の小河内軍太夫に千手狸を捕まえるよう命ずる。
 軍太夫は、皮職人の五平と共に、那須野が原を奥へと進んでいく。
 しかし、捕れるのは小狸ばかり。
 そこで軍太夫は小狸の皮を縫い合わせて、毛を金色に染めて、ごまかそうと考える。
 その夜、軍太夫の枕元に、白髪の老人が現れ、小狸を黒羽山の千年杉の所で逃がさねば呪いがふりかかると警告する。
 軍太夫は護法寺の風念坊に相談し、狐狸が最も恐れる方法を教えてもらう。
 翌日、軍太夫は、小狸をおとりにして、「経のくどくがしみこんでいる線香の灰」でもって、千手狸をやっつける。
 千手狸は毛皮にされ、大関増高は、自分をバカにした内田正房に贈る。
 だが、毛皮にされても、千手狸の生命は尽きてなく、関係する人々に次々と祟りが及んでいく。
 一方、小河内軍太夫によって、外様大名達による謀反の計画が秘密裏に進行していた。
 密書をなくした軍太夫は、その秘密を知っているらしい忍光太郎を追うが、光太郎は巧みにその手から逃れていく。
 忍光太郎の正体は…?
 そして、千手狸の呪いの行方は…?」

 狐と較べると、ぐっとマイナーな狸を題材にした作品です。
 メタボな狸のイラストのせいで緊張感に欠けるのかと思いきや、千手狸の呪いが関係者にふりかかるあたりは、かなりの怪奇ムードで、感心しました。
 ラストには、千手狸の毛皮で空を飛んで、悪者を追っかけるシーンもあり、作者のポテンシャルの高さを感じます。(ちょっと笑ったけど…)

・備考
 カバー貼り付け。糸綴じあり。読み癖あり。p12、コマ内に剥げあり。前後の見開きのノド、紙テープで補強。前後の遊び紙、ほぼ欠損。

2020年5月11日 ページ作成・執筆

太平洋文庫・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る