坂上泰夫「地獄案内」(150円/1960年12月25日発行)

「奥州高倉七万石。
そこは非常に貧しい土地で、幕府より咎めを受けた大名が移り住む所であった。
高倉を治める松平輝長は、兄の輝正と父を謀反の冤罪を着せて殺害し、宇和島(愛知県南部)十万石の藩主となる。
だが、輝正の祟りにより、輝長の額に人面疽ができ、夜な夜な責め続ける。
そんなある日、松平藩の紋服を着ている浪人が、輝長の前に引き出される。
浪人は舌が切り取られており、輝長の前で切腹したいと書面で申し出る。
浪人が切腹するため、着物の前を開くと、彼の腹には輝正の顔が浮き出ていた。
輝長は浪人を斬るように命ずるが、浪人はその場から逃走する。
また、治ったと思われた、輝長の人面疽は、娘の額にのり移っていた。
一方、数馬という青年は、兄の大四郎の亡霊と出会う。
大二郎は、五年前、隠密として四国に旅立ったきりであった。
以来、数馬は大二郎に癖や仕草が似始める。
ある日、家に大二郎が帰って来るが、その姿は消え、老中宛ての密書が残されていた。
密書の中身とは…?
そして、唖の浪人の正体は…?」
「人面疽」を扱った意欲作だと思います。
ただし、他の坂上泰夫先生の作品とも共通することですが、登場人物の顔が皆、同じで、ストーリーの把握が非常に困難です。
ストーリー自体はかなり面白いと思うのに、残念…。(ちなみに、「地獄変」の要素もあります。)
あと、復讐を果たすために、成仏するわけにいかず、供養を拒否する亡霊というのは斬新だと思いました。
念仏を唱える母親を猿ぐつわをかまして、柱に縛り付けたり、あろうことか、首を絞めあげたりと、なかなか過激です。(結局、母の愛に負けております。)
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり。小口の底に名前の書き込みあり。綴じ外れが何カ所かあり。pp23・24、27〜30、大きな裂けあり、また、pp27・28はテープ補修。
2020年5月9日 ページ作成・執筆