谷ゆきお「死ぼたん化粧」(200円/1964年頃)
「矢代カオル(注1)が昆虫採集をしている時、倒れている女性を発見する。
女性は、日射病に軽くかかった程度で、カオルの家で意識を取り戻す。
彼女の名は、岸本冴子といい、白く透けるような肌をした黒髪の美人であった。
これを機に、カオルと冴子は親しく付き合うようになる。
カオルが冴子の家を訪ねると、そこに冴子の恋人、山口吉弘という青年がいた。
三人は川の方に遊びに行くこととなる。
その三人を陰からひそかに窺う、順平の姿があった。
冴子の父は会社の社長であり、順平はその社長の覚えがめでたき秘書であった。
彼は冴子に横恋慕するものの、陰気な性格かつ容姿のため、冴子からすっかり敬遠される。
カオル達が川で遊んでいると、急な雷雨に襲われ、びしょ濡れの三人は空き小屋に避難する。
稲光が走った時、吉弘は、冴子の身体が透けて、骨や血管が浮き出ているのを目にする。
実は、冴子は「肌が白く透き通る不思議な病気」(p50)にかかっており、カラー化粧でその症状をごまかしていたのであった。
吉弘は冴子を化け物扱いして、その場から駆け去る。
その機会をいかし、順平は吉弘を転落死させるのであった。
吉弘の死により、冴子は失意に沈む。
追い打ちをかけるように、冴子の父が脳溢血で急逝。
順平が次期社長に就くが、遺言により、冴子は社長となる者と結婚しなければならない。
冴子は順平を拒絶するが、冴子の奇病のことを暴露すると脅され、しぶしぶ結婚を受け入れる。
しかし、冴子の奇病を知った順平はもう彼女を慕ってはいなかった。
冴子、カオル、順平の三人で温泉旅行に行った時に、順平は冴子を溺死させる。
冴子の死は心臓麻痺とされ、順平は全てを手に入れたかに見えたが…」
手塚治虫先生の「アラバスタ―」を先取りしたような設定ですが、皮膚が透けて、骨・血管・内臓が見えるというのには何か元ネタがあるのでしょうか?
「娘の霊が、殺した相手に復讐する」という、目新しくないストーリーに、「奇病」の要素を加え、面妖な雰囲気を醸し出すのに成功しているように思います。
欲を言えば、この奇病の描写をもう少し頑張って欲しかったな〜。(絵を見る限り、スケスケというより、ひび割れ人間です。)
それでも、谷ゆきお先生らしい、やけに陰惨な恐怖・残酷描写が多く、嬉しい限りです。
・注1
「やしろ」の名字はわかるが、当てる漢字がわからず、とりあえず「矢代」を当てました。
・備考
ビニールカバー貼り付け。本文、シミ、汚れ多し。下部、全体に渡って濡れ痕あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2017年8月23日 ページ作成・執筆