望月みさお「猫かくし婆」(220円/1967年頃?)



「滋賀県岩根での話。
 ある荒れ果てた山寺に、人間嫌いの老婆が、沢山の猫と一緒に住んでいた。
 老婆が心臓発作を起こしている時、なくしたボールを探して、悦子という名の少女が山寺に入り込む。
 悦子は老婆が苦しむ様を見て、急いで薬を取りに行き、老婆は一命をとりとめる。
 少女の優しさに心打たれた老婆が少女と一緒にいたいと呟くと、猫達は不思議な能力を使い、悦子をさらってくる。
 老婆は改めて猫達の思慕に気付き、悦子を家に帰す。
 その直後、老婆は再び発作を起こし、死亡。
 人魂を見たことで、悦子は老婆が亡くなったことを知り、人を呼びに山を下りる。
 その間、猫達は、老婆が嫌っていた人間達に死体を渡さないため、死体を隠してしまう。
 人を連れて戻って来た悦子であったが、老婆の死体はなく、老婆の死を誰も信じてくれない。
 実の父親までも彼女のことを信じてくれず、悲嘆に暮れている時、悦子は急に苦しみ出す。
 その時から、悦子には人の心を読む能力と予知能力が備わる。
 後日、一人で老婆を埋葬した後、悦子は、心中を考えていた母子を予知能力で救う。
 それを皮切りに、悦子は山寺で占いをして、多くの人々の悩みを解決していく。
 実は、悦子には、成仏していない老婆の霊と、不思議な能力を持つ猫達が憑りついていたのであった…」

 個人的に、久々のヒット作です。スゴく楽しめました。
 ぶっちゃけ、ヘンなマンガです。(私の貧弱な語彙力では、他の表現が見つかりません…。)
 後半、ヒロインが予知能力者になってしまうあたり、常軌を逸した展開で唖然とする他ありません。
 更に、ネタばれとなりますが、ラストは「老婆の霊は成仏し、ヒロインが占い師を勤める山寺は大繁盛」というもの。
 それってハッピー・エンドなんでしょうか…?

 また、望月みさお先生の独特の表現力は本作品でもスパークして、暴発しまくりです。
 とりあえず、どんなものかご覧になってください。
 まずは、ヒロインの一行が猫に襲われる描写。

 次いで、占い師になったヒロインが、からかいに来た男達に幻覚で地獄を体験させる描写。(緊迫感の感じられないおばはん達の描写がスゴい。)

 なんちゅ〜か、良くも悪くも唯一無二です…。
 恐らくは、望月みさお先生の頭脳には目くるめくような華麗なビジョンがひしめき合っていたのかもしれません。
 ですが、画力が全く追いつかなかったために、バッド・トリップな側面のみが濃厚に浮かび上がっているように私は感じています。
 ただ、絵柄はプリミティブであるものの、新たな表現を模索している点は、素直に頭が下がります。
 でも、やっぱり、あの〜、画力がちょっと…ね…。
 もしも、望月みさお先生のマンガが再発見・再評価され、その果敢な表現の実験が今の漫画家達によって洗練されていったなら?
 どんなマンガになるのか、さっぱり、見当がつかね〜や…。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕ひどし(特に裏側)。カバー破れ補修あり。糸綴じあり。前後の見開きにテープ痕あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2017年5月8日 ページ作成・執筆

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