三田京子「死人形リサ」(220円/1966年頃?)



「女子中学生、ゆかりは帰宅途中、老婆と美しい娘に出会う。
 その美しい娘は実は精巧にできた人物サイズの腹話術の人形であった。
 老婆は孫娘を失った寂しさからそっくりの人形を作り、その人形をリサと呼んでいた。
 帰宅したゆかりは、両親にその話をすると、リサという名を聞いた父親が顔色を変える。
 以来、家族の前に度々、老婆とその人形が現れるようになる。
 しかも、その人形は老婆の手を離れ、自由に動いているのであった。
 ある夜、ゆかりはナイフを背中に突き立てられて、殺害される。
 犯人は老婆とその人形であった。
 ゆかりの母親は老婆を屋敷の屋上に追い詰め、屋上から突き落とすのだが…。
 老婆とその人形、リサの秘密とは…?」

 メチャクチャな話です。全くもって、弁護のしようがありません。
 ネタばれいたしますと、実は、老婆が腹話術の人形で、リサは人間で、老婆の人形を操っていたのでありました。
 まあ、どんなにデタラメで無理矢理な設定でも見せ方一つである程度のカバーはできると思うのですが、これは…ちっとも…カバーできてない……。
 また、粗筋には記載しておりませんが、途中から突如、美少年とリサとの淡く悲しい恋の描写に突っ走り、話をますます混乱させております。
 んで、ストーリーはワケのわからないまま二転三転、そして、カタルシス皆無のラストを迎えます。
 読後、読者には釈然としない感のみ残るのではないでしょうか。

 個人的には、失敗作だと思いつつも、それでも唯一無二の作風・個性であり、切って捨てるには忍びない作品であります。
 読むことはかなり困難だと思いますので、ラストの(文字通りの)修羅場の描写だけで申し訳ないのですが、味わってみてください。(あの時代にここまで生臭い修羅場の描写は稀少であるように思います。)

・備考
 ビニールカバー貼り付けあり、また、それによるカバー歪み。pp1〜8、ページの上部隅に痛みや小欠損あり。前の遊び紙、欠如。後ろの遊び紙に鉛筆の書き込みを消した跡と貸出票の剥がし痕あり。

2016年11月12日 ページ作成・執筆


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