三田京子「怪談ふり袖ざんげ」(220円)



「日本画家の若麿。
 その美しい容貌と甘い言葉に惹かれ、彼の屋敷に連れて来られた娘達は二度と家に帰ることはなかった。
 若麿の屋敷には、美しい振袖に美味しい食事があり、琴でも花でも好きなことを自由にできる。
 そして、何よりも、若麿のモデルとして、彼に仕えることができることが最大の魅力であった。
 しかし、夕佳だけは違った。
 若麿の甘言に乗って、屋敷に来たものの、彼女は許嫁のある身であった。
 彼女は若麿を避けようとするが、若麿は彼女に母親の面影を見出し、執着する。
 そして、(直接の描写はないものの文脈から判断すると)若麿に手籠めにされた夕佳は川に身を沈める。
 以来、若麿の周囲では奇怪な出来事が起こるようになる…」

 正直なところ、失敗作だと思います。
 素人目から見ても、構成に難がありまして、前半が意味のない描写でムダに費やされております。
 そのため、亡き母親へアンビバレントな感情を抱く主人公や、ヒロインの葛藤がちっとも描かれておりません。
 また、ラストも、何回か読みなおしましたが、全く意味不明です。
 作者の頭の中ではちゃんとしたストーリーがあったのでしょうが、それを作品化した際に、細部の描写に力が入り過ぎ、肝心のストーリーの輪郭が崩れまくったのではないか?と私は推測しています。
 とにもかくにも、この作品の主人公の若麿は性格悪いくせに、ウハウハのハーレム状態で、こんな奴が本当にいたら、コブラ・クラッチの餌食にします。絶対にね。

・備考
 カバー欠。背表紙下部に貸本店のシール貼り付け。小口や天にゾッキ線や貸本店のスタンプ押印。

2018年1月14日 ページ作成・執筆

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