しきはるみ「怪談冥途の母」(220円)
「轢き逃げにより母親を亡くした夏子。
死んだ母親と夏子は、栗田家の後妻とその連れ子であり、父親は彼女達が栗田家に来て、二年後に死去。
前妻の娘である、長女敏子と二女寿美子は血のつながっていない夏子を嫌い、嫌がらせをする。
その中で、長男である光男だけは夏子に優しく接していた。
夏子は敏子により学校を辞めさせられ、死んだ母親に代わりに家事を一手に引き受けることとなる。
彼女なりに努力をするものの、母親と同様に家事などできるわけもなく、敏子と寿美子の嫌味に夏子の心は千々に乱れるのであった。
ある夜、夜道で一人泣いている夏子のもとに、彼女のことを心配した母親の亡霊が現れる。
母親は夏子の話に耳を傾け、夏子は久しぶりに母親にたっぷり甘えることができた。
その夜から母親の亡霊が厨房に現れ、夏子の代わりに朝食の準備やら家事を行うようになる。
また、母親は料理のレシピを夏子のもとに残していくのだった。
しかし、ある夜、夏子は夜道で轢き逃げに遭ってしまう。
運転手は敏子の恋人で、彼は夏子の母親を轢き逃げした犯人であった…」
ビミョ〜なタッチのジャケット・イラストが横隔膜をくすぐられるような感覚をもたらしますが、ストーリーは緩〜い「人情モノの幽霊譚」であります。
明らかに突っ込みどころ満載の内容で、つまらない…かと思いきや、意外と心惹かれます。
陳腐なまでの「人情話」って、今現在では逆に新鮮なのではないでしょうか?
しきはるみ先生の放つ、もろド直球なストーリーが心にジンジン響きます…と言うか、それしか投げられなかったフシがありますが…。
また、安直な発想もいい塩梅で、緩〜いストーリーに華を添えております。
母親の亡霊が巨大な火の玉に乗って来る描写とか、雲の上に、杖を持った老人の神様(頭上には光輪)がいる天国(陳腐…)の描写とか、チープという形容を通り越して、味わい深いです。
と、まあ、あれこれ失礼なことを多々書きましたが、私としてはこの作品をけなそうというつもりは微塵もなく、ただ単に好きな作品なのであります。
(欠点をあげつらうことは容易く、優れた点を正確に評価することは骨の折れることだと、つくづく思いますね。)
・備考
ビニールカバー貼り付け、それによる表紙の歪み。糸綴じあり。全体的に湿気による歪みあり。読み癖あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2016年3月13日 ページ作成・執筆