望月みさお「変身母狸」(220円/1968年頃?)
「山奥の農村で暮らす平岡一家は、両親とユカの三人暮らし。
ユカの父親は村一番の猟師で、彼を頼って、田村というおっさんが訪ねてくる。
田村は、年に一回、ユカの父親の案内で、猟をするのを楽しみにしていた。
ユカの父親が今日はダメと言うのを、田村は頼み込んで、二人は山に出かける。
実際、獲物はなく、欲求不満の田村は、ユカの父親が止めるのも聞かず、母子の狸に銃を向け、母狸を傷つける。
そこに獣医らしき青年が通りがかり、傷ついた母狸を介抱しようと立ち去るが、田村はこれを父狸の変身と見抜き、射殺。
しかし、調子に乗った田村は、狸と勘違いして、主人の様子を見に来た、ユカの母親を撃ち殺してしまう。
狼狽した田村はその場から逃げ出すが、先程傷つけた狸の母子により幻覚を見せられ、山の中で行方不明となるのだった。
一方、平岡家では、ユカが、冷たくなった母親と対面し、嘆き悲しんでいた。
いつまでも母親のことを哀しみ続けるユカを、同じく肉親を亡くした狸の母子がいたく同情する。
子狸に促され、母狸はユカの母親に化け、ユカを慰める。
その頃、ユカの父親は村長から村に害をなす狸どもを退治するよう頼まれていた。
ユカからは動物を殺さないよう言われているが、かと言って、生活もしていかなきゃいけない。
そのジレンマの中、ユカの父親は、母狸がユカの母親に化けて、ユカを慰めていることを知る…」
狸を題材にしたマンガは、狐と較べると、遥かに少ないようですが、東京漫画出版社には幾つか存在します。
私が知る限りでは、森由岐子先生の「まぼろし草子」と、しきはるみ先生の「怪談継母たぬき女」の二つがあります。
その先生方に対抗したというワケでもないのでしょうが、(基本的に「猫」系の怪奇マンガが多い)望月みさお先生も描いております。
内容は、非常にドロ臭く、「もっさり」しております。
舞台はど田舎で、下手すりゃ電気も通ってなさそうな感じです。(料理に囲炉裏なんか使ってます。)
そんな僻地で、少女と母狸の交流が描かれるのですが、望月みさお先生の描く狸には「可愛げ」というものが全くなく、野生じみてるところがムダにリアル。
望月みさお先生はユーモラスに描写しようと努めているものの、薄汚い外見や言葉遣いが逆効果となって、狸が田村のおっさんを責め苛む描写なんかは、やけに陰湿です。(下の画像を参照のこと)
まあ、スマートな印象の狐と比較して、狸には垢抜けないイメージが多分にありますので、そういう点を鋭く抉り出した作品と言えるかもしれません。(テキト〜言ってます)
・備考
ビニールカバー貼り付け、また、それによる歪み。湿気により、本体ベコべコ。本文に水濡れの痕ひどし。糸綴じの穴あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2017年2月1・2日 ページ作成・執筆