小林生枝「怪談絵巻」(220円)
収録作品
・「第一話 死霊の怨念」
「法念に脱雪という尼僧がいた。
彼女は首に布を巻き、決して人目にさらそうとはしなかった。
彼女は、もとは雪という名で、黒川保光という殿様のおそば付きの女中であった。
保光には藤という妻がいたが、結核で長らく床に臥せ、殿様は雪を妻以上に愛していた。
正月も近い頃、藤が多量に喀血。
妻の危篤を聞いた保光は藤のもとに駆け付ける。
藤は雪を呼び、死ぬ前に庭をもう一度見たいので、雪におぶってくれるよう頼む。
雪が背を向けると、藤は今までの憎悪と嫉妬を剥き出しにして、雪の首を両手で絞めあげ、こと切れる。
どうしてもその両手は雪の首から離れず、切断されてもなお、両手は雪を責め苛むのであった…」
・「第二話 幼なき仇討ち」
「田代矢ヱ門は、早くに妻に先立たれてからも、後妻をもらわず、子供達と婆やの四人で暮らしていた。
子供は姉の恵美と弟の相之進の二人で、父親も子供達も互いに深く慕っていた。
ある日、矢ヱ門が城から冷たい死体となって帰ってくる。
遺書には、金の件であらぬ嫌疑をかけられ、それを晴らすために切腹した旨、書かれていた。
だが、矢ヱ門の親友、青柳は、勘定係の野本弥治右エ門が矢ヱ門を陥れたことを突き止める。
恵美と相之進はまだ子供でありながら、父親の仇討ちに意欲を燃やし、心を打たれた青柳と婆やは二人に稽古をつける。
だが、殿の命で、青柳は急遽京都に旅立たねばならなくなる。
そこで、相之進と恵美は命を絶ち、幽霊となって、仇討ちを果たそうとするのであった…」
・「破約の因果」
小泉八雲の「破約」そのまんまです。
ラストがちょこっと変えられて、「純愛」風にされておりますが、個人的には原作のラストの方が味わい深いと思います。
スタンダードな怪談話を漫画化した作品集だと思います。(小泉八雲の「破約」しかわかりませんでしたが…。)
この味のあり過ぎる絵が、古めかしい怪談となかなかマッチしていると私は思います。
・備考
ビニールカバー貼り付け、また、それによる本体の歪み。シミ多し。pp46・47、輪ゴムか何かが挟まり、剥げ。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2017年9月29日 ページ作成・執筆