三田京子「鬼火を売る少女」(220円)


「冬。都会の片隅で、貧しい少女、蕾がマッチを売って歩いていた。
 寒さと飢えに耐えかねた蕾は、売り物のマッチに火を付け、暖を取る。
 すると、マッチの灯りの中に、城の姿が浮かび上がってくる。
 気が付くと、蕾はその城の庭にいた。
 雪丸という名の小姓に蕾は中に招き入れられ、彼の好意により城に滞在することとなる。
 奇妙なことに、城には雪丸と、彼の主人の霧姫の二人しか住んでいない。
 また、蕾は庭の池に白装束の女達が跳び込むと、鬼火が池に浮かぶのを見る。(この女性達に関しては、最後まで説明なし。)
 蕾は雪丸に微かな思慕を抱くが、ある夜、雪丸と霧姫が同衾している場面を目にする。
 その時、雪丸は蕾を、手討ちにされた自分の妹、千夜里(ちより)と混同する。
 どうも雪丸には人に知られない過去と目的があるらしい。
 そして、雪丸が目を付けている、霧姫の手毬には何が隠されているのであろうか…?」

 ぶっちゃけ、失敗作だと思います。
 「マッチ売りの少女」がマッチの灯りに浮かんだ城にタイム・スリップするという発想はいいのですが、後がグダグダです。
 思わせぶりなだけで、物語と関係なし…という描写が多いです。(池川伸治先生のマンガによくあるパターンですね。)
 内容も説明不足で、非常にわかりにくい。(まあ、そこは「分裂的」と楽しめなくもないですが…。)
 そして、後記ではストーリーの補足説明をしてから、「貧しく可哀相な少女」には「優しく暖かい手を差しのべる」よう読者に勧めております。
 あまりお勧めできないマンガでありますが、個人的に「雪丸に迫る霧姫様の描写」(p80)がちょっと色っぽいと思っております。
 「女の性(さが)」ってものを(大して詳しくはありませんが)感じさせます。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。前の遊び紙に折れ痕、下部に破れあり。乱丁によりpp1〜8が二度繰り返し。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2017年1月16日 ページ作成・執筆

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