丘野ルミ「幽霊の子守唄」(220円)
「六月。雨のしとしと降る夜。
郊外の川土手で、スピード超過のトラックが、幼い坊やをおぶった若い母親を轢き逃げする。
事故で母親の首は飛んでしまうが、後で、警察がいくら捜索しても、発見されなかった。
母親を失った父親は失意に沈むが、隣の夫婦とその子供達が、坊やの面倒を積極的に見てくれる。
一方、母親を轢き殺した運転手は、母親の生首幽霊により、事故を起こし、危篤状態で病院に運ばれる。
瀕死の運転手を母親の生首幽霊は情け容赦なく苛み、彼は轢き逃げを自白して、絶命する。
運転手の自白により、配送会社から父親のもとに見舞金が入る。
それを生活の足しにするのかと思いきや、気の大きくなった父親は毎晩、飲み歩くようになる。
父親は、坊やのために、再婚するが、その相手は飲み屋の女であった。
当然のことながら、その女は子供なんかには興味がなく、放置しまくり。
母親の幽霊は見るに見かねて、子供の世話をしに、幾度と現れる。
母親の幽霊に怯えた、水商売の女は、父親に子供を捨てて、どこか遠くに逃げようと提案。
元来意思の弱い父親は女に押し切られ、隣の夫婦に子供を無断で託し、女と共に車で逃避行。
だが、山中で、母親の生首幽霊が現れ、二人に死の報いを与える。
遂に孤児となってしまった坊やを、隣の夫婦は孤児院に預ける。
しかし、毎夜、孤児院に母親の幽霊が現れ、坊やは隣の夫婦のもとに返される。
隣の夫婦は、子供達の勧めもあり、坊やを自分達の子供として育てることを決意するのであった…」
ストーリーだけ読めば、そこまで新味のあるものには思えないかもしれません。
しきはるみ先生が描いても、ちっとも違和感のない内容であります。(継母も出てきますしね。)
でも、そこは丘野ルミ先生、きっちり「悪趣味」を注入して、「ゲテモノ」にしてくれてます。
この作品の母親の幽霊、子供の前に現れる時は普通なのですが、怨みのある相手には「生首幽霊」となって執拗に追い詰めます。
まずは、事故を起こした運転手を憑り殺すシーン。
そして、山中で、子供を捨てた父親を事故死に追いやるシーン。
絵はほのぼのしているのに、画面には「殺気」が満ち溢れ、陰惨の一言。
当時から幽霊を題材にした作品は多数描かれておりますが、「人情もの」と「復讐もの」と「バッド・テイスト」を際どく同居させた作品は稀有なように思います。(個人の感想です。)
・備考
カバー小痛み。ビニールカバー剥がし痕あり。糸綴じあり。pp26・27、食べかす挟まって、シミ。pp62・63、コマにかかる裂け。後ろの遊び紙に、貸出票の剥がし痕とボールペンでの書き込みあり。
2017年10月25日 ページ作成・執筆