三田京子「狂い化粧の美少年」(220円)



「松風村に現れる、謎の美少年。
 彼の横笛の音色を聞いた少女は皆、美少女へ変貌する。
 咲江もその一人であったが、美しくなった少女達が高慢ちきになる中、彼女はただ一人美少年への思慕を深める。
 しかし、咲江を最後に美少年は姿をあらわさなくなり、消息がわからない。
 思い余った咲江は、心を込めた折った千羽鶴を手に、美少年と会った、高原の湖を訪ねる。
 すると、竹やぶの中から、あの笛の音色を耳にする。
 咲江が竹やぶに分け入ると、笛を吹く美少年と謎の女性(実は、彼の姉)が涙を流しながら、腰を下ろしていた。
 急に立ち去ろうとする二人を咲江が追おうとすると、お化粧地蔵が彼女の前に立ちはだかる。
 危ないところを美少年に助けてもらい、咲江は彼に胸の想いを明かす。
 だが、彼は病により余命いくばくもない身体であった。
 彼は自分のことは忘れるよう咲江に告げ、彼女の前から去るのだが…。」

 三田京子先生の絶頂期に描かれた作品の一つであります。
 社会派の作品(「聖女もなりざ」等)と較べたら、インパクトは劣りますが、それでも他に類を見ない「濃さ」です。
 この作品で(そのスジでのみ)有名なのは、笛の音色を聞いた少女が美少女に変貌する描写でありましょう。(右の画像を参照のこと)
 また、後半、突然に登場する「お化粧地蔵」も衝撃でありました。
 後書きにて、この「お化粧地蔵」は鹿児島市立美術館内にある「持命院」であると書かれております。
 ネットで調べましたら、「持命院」は島津義久の三女、島津亀寿(1571〜1630)の法名であり、また、この石像は「じめさあ」(土地の言葉でしょうか?)とも呼ばれているとのこと。
 亀寿の命日の10月5日には「じめさあ」に化粧直しが行われているそうです。
 ちなみに、この「じめさあ」もしくは「持命院」様、画像で見たところ、なかなかのインパクトです。
 三田京子先生も旅行か何かの折に目にして、心に残るものがあったと推測します。
 にしても、草葉の陰の「持命院」様も、こんなマンガにこんなかたちで登場させられるとは、予想だにしなかったでしょう。(下の画像を参照のこと)
 また、「じめさあ」を扱ったマンガも、私が知る限り、これしかありません。(他にもあったら、ごめんなさい。)

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり(頑張って剥がしました)。ビニールカバー貼り付けによる表紙の歪み。糸綴じあり。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。

2017年1月14日 ページ作成・執筆

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