谷ゆきお「悪たれ呪術」(220円/1966年3月頃完成)



「靖彦は、しがない万歩計のセールスマン。
 ある日、彼が訪れた家は、奇妙なもので溢れ返り、婦人もどこか変わっていた。
 更に、その娘は小人で、大人の顔に子供のような身体(注1)であり、また、知能も小学生程度であった。
 麻代という名の娘の不思議なムードに惹かれ、靖彦は再びその家に向かう。
 塀の隙間から覗き見ると、麻代がブランコ遊びをしていたが、その足には鎖のついた鉄輪がはめられていた。
 母親の不在時は、勝手に外出できないように、拘束されているらしい。
 覗き見が麻代にばれた靖彦は、彼女に頼まれ、鉄輪を外し、町を案内する。
 その時に、靖彦は、麻代が呪いで何でもできることを教えられる。
 実際、彼女をジロジロ見つめたおもちゃ屋は地震にあい、バカにしたチンピラは喫茶店の看板に直撃されて死亡。
 騒ぎの最中、麻代の母親が現れ、強引に彼女を家に連れて帰る。
 その後、靖彦は地方の出張販売にとばされる。
 寂れた村で、土砂降りの雨にあい、雨宿りをしていた時、彼の目の前に、傘をさした麻代が現れる。
 靖彦が彼女の後を追うと、麻代は忽然と姿を消してしまう。
 東京に戻った靖彦が、彼女の家を訪れると、母親から麻代の死を聞かされる。
 以降、彼の身の周りでは、奇妙なことが起こるようになる…」

 谷ゆきお先生は、半世紀も前に「奇想」溢れる貸本怪奇マンガを幾多と残しておりますが、この作品は今一つパンチが足りないように思います。
 「呪いの力を持った小人の女性」という題材は面白いと思うのですが、うまく話しがふくらまなかった感じです。(ラストはほろ苦いです。)
 この作品は、ストーリーよりも細かい部分の描写の方が興味深いのではないでしょうか。
 「オバケのQ太郎」のかぶり物や、麻代の服の柄(トカゲ柄、魚柄、蛇柄)、奇怪なグッズで溢れた屋敷の描写等、味わい深いです。
 特に、この屋敷のドアホン(?)、なかなか凄いセンスです。(ストーリーには全く絡みませんが…。)
 三原一晃先生の「恐怖バラ屋敷」にもありましたが、いつか機会があれば、「怪奇マンガに出てくる、変なドアホン」についてまとめてみたいものです。

・備考
 状態悪し。Y文庫仕様(カバー裏に新聞紙等による補修。表紙を本体から取り外し、本体を何らかの厚紙で覆っている)。糸綴じあり。カバー痛みあり、また、背表紙色褪せ。

2016年9月9日 ページ作成・執筆

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