林まさ也「魔の淵」(220円)
「早苗は夫を捨て、駆け落ちするものの、二年後、相手の男に捨てられる。
二児を抱え、途方に暮れた早苗は、次女で赤ん坊の静代を実家の父親に預けた後、捨てた男の姉、生島則子のもとに相談に出かける。
そこで、長女のみどりを則子のもとに養子に出し、自分は親子であることを隠したまま、下女として生島家に仕えることになる。
生島家は日本舞踊で知られた名家であり、そこの一人息子の正彦とみどりは実の兄妹のようにして育つ。
十五年後、互いに愛し合うようになった二人は創作舞踊発表会に向けて頑張るが、舞踊の生徒の黒島信子がみどりに嫉妬。
議員の父親の脅迫により、生島則子はみどりに怪我をさせて、発表会を欠場させようと目論む。
しかし、手違いにより正彦は大怪我により失明。
更に、自分の出生の秘密や母親の死を知らされ、みどりは失踪する。
盲目になった正彦は、早苗の父親のもとで療養することとなる。
静代は彼に想いを寄せるが、正彦は彼女の想いを知りながらも、みどりのことを忘れることができない。
ある日、彼は、魔の淵と呼ばれる湖で、女の亡霊が舞を踊り、その舞を見た者は皆、謎の熱病にかかって死ぬという噂を耳にする。
静代の手引きで、正彦は魔の淵に向かうのだが…」
陳腐かつ説明不足な内容で、正直、出来は芳しくはありません。
ただし、この作品には一つ、興味をそそられるものがあります。
それは「森由岐子先生からの影響」。
ストーリーからして「血はつながらない兄妹として育てられ、いつしか愛し合う仲に」「日本舞踊」「ヒロインに敵意を燃やすライバル」「引き裂かれる二人」「あの世で恋愛成就」と森由岐子作品のキーワードとも言える要素だらけで、かなり参考にしたのではないかと推測しております。
当時、森由岐子先生は東京漫画出版社とひばり書房を股にかけ、多くの作品を出版しておりましたが、この作品を読んで、東京漫画出版社での存在の大きさを感じさせられました。
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり。カバー貼り付け。糸綴じあり。pp13〜32、目立つシミあり。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。
2018年7月5日 ページ作成・執筆