なぎさ洋「人魚の花嫁」(220円)
話を始めるにあたって、まずは、見てください、木村仁(光久)先生による素晴らしい表紙を!!(左側の画像を参照のこと)
んで、ページをめくってすぐに、腰が「砕ける」というレベルを通り越して、「粉砕」されました。
これがマンガに出てくる人魚です。(中央画像を参照のこと)
口に花をくわえて気取っておりますが、頭にのっかかっているラフレシアのような、というか痔持ちの人向けの円座クッションのような花が、ドラクエに出てくる毒の沼のように、こちらの興をがんがん削いでいきます。
大体、この胸まわりの点々の帯は何なんだよ?!
中学校の頃にディズニーの『リトル・マーメイド』を観た時、主人公のアリエルは人魚の頃は貝殻のブラジャーしかつけていなかったくせに、ラスト、人間になって陸に上がってくるシーンで、何でドレスを着てんだよ!!と、ブラウン管に向かって、チョップをかましそうになったことを思い出しました。
最終回で、すっぽんぽんでトリップしまくっていたマコちゃん(『魔法のマコちゃん』)を見習えと言いたいですね。
おっと、話が逸れそうになりました…
一見して明らかなのですが、表紙と中身の作者が違います。
昔の貸本漫画にはよくある話なんです。
ビデオレンタルにしてもそうですが、出版社にとって最大の課題は「如何にして借りてもらうか?」ですね。
実力のある作者を擁して、一流の作品を送り出すのがベストなのですが、そんなこと、ゼニとコネのある大手しかできやしません。
中小の出版社としても、新人を発掘して、育てていくのが理想なのでしょうが、そんな慈善事業みたいなことをしていたら、会社がぶっ潰れちゃいます。
となると、残された方法は一つ。
借りさせるために、パッケージで期待させて、中身はショボショボというやつですね。(個人的に、AVとファミコンのゲームでこういう経験が多かった気がします。)
今も昔も、目先のゼニ目当てのメーカーと、煩悩ははち切れんばかりだけど金のないジャリどもの小競り合い…世の中、表層はいくら移ろっているように見えても、基本的な構造は変わらないものなのでしょう。
ちょっぴり厭世的な気分になりましたが、とりあえずは、粗筋を紹介しましょう。
「釣りをしていて、波にさらわれた主人公、満(みつる)は見知らぬ洞窟で目を覚ます。
洞窟を探索している時、歌声が聞こえてくる。
岩陰から覗くと、そこには、美しい(…のか…?)人魚がいた。
彼女の名はロア。
ロアが言うには、そこは人魚の島。
人間に興味を持った彼女が満を連れてきたという。
二度と人魚の島から出ることはできないとロアから言われていたのだが、育ての親である祖父母のことが気にかけ、憂いに沈む満。
ロアは満を愛するが故に、掟を破って、二人で人間の世界に戻るのであった。
ロアは「文(あや)」と名を変え、満の祖父母の家で生活を始める。
いつかは満の嫁にという話まで出たのだが、ある夜、海で人魚に戻っているところを祖父に目撃されてしまう。
人魚を嫁にはできぬ、どうにかして人間になってほしいという満の祖父母の要望に、人間になる決意をする文。
しかし、人間になるには、一月の間、水の中に入らないという、命がけの苦行に耐えないといけないのだった。
祖父は文の居場所を満に秘密にするが、ある夜、祖父の跡をつけ、山小屋の中の文と再会する。
そこには、衰弱した文がいた。(ついでに、ばっちそう…一月近く、風呂に入ってないから。)
あと3日で人間になれるから…と、祖父と文の説得で、一旦は家に戻る満。
しかし、衰弱した文の夢を見て、人魚のままでもかまわないと山小屋にかけつけた満だったが、その時、文は虫の息だった。
満の愛を確認してから、息絶える文。
満は文の死体を抱きかかえ、海へ歩みさっていく。
おしまい」
う〜ん、メルヘンですね。
内容的には、ありきたりといえばありきたりですが、大きな破綻もなく、まとまっております。
ただ、この下手過ぎるわけではないけど、うまいとは口が裂けても言えない、微妙な絵柄が、妙な空気をかもし出しております。
しかも、意欲的な描写や、実験的なコマわりもちらほらとあって、才能がないわけじゃないんです。
(画像を参照のこと。人間の生活を始めた人魚が、月夜に海で人魚に戻るシーンです。何か…頑張ってますよね…)
でも、努力と反比例して、『感動』という言葉から果てしなく程遠い作品になっちゃってる…そんなマンガです。
(まんだらけさんのホームページでは、この作者のマンガを評して、『脱力系』と位置づけていました。的確な指摘です。)
ちなみに、最後あたりのページで、次号の予告『四次元星』というのが載っています。
メルヘンの次は、SFですよ!!スペースオペラですよ!!
怪奇マンガとは言い難いのですが、気になる方もいるでしょうから、簡単に粗筋を述べておきましょう。
「198X年、宇宙空間に突如現れた、謎の星『Q』を調査するため、東京宇宙空港から宇宙船が発射される。
『Q』に関してわかっているのは、地球に似かよっているらしいことと、表面が氷河で覆われているということだけだった。
引力圏を脱出する際に、調査計画の責任者である科学者の娘、純子が行方不明になるが、それ以外はトラブルはなく、宇宙船は『Q』に着く。
探検車二台に分かれて、星を探索することになるが、一台と交信不能となる。
主人公の中野直樹の乗る探索車はもう一台を捜すと、どうやらクレバスに落ち込んだ様子。
クレバスに紐を下ろして、直樹はクレバスの底の様子を探りに行くが、紐が切れてしまう。(もっと丈夫なもの、使えよ…)
気がつくと、直樹のそばには焚火が焚かれており、行方不明になったはずの純子がいた。
そして、彼女は原始人達によって洞窟に囚われていたのであった…」
相変わらず、木村仁先生によるジャケットは素晴らしいのです。
でも、内容はお勧めできません。
もう一度言います、お勧めできません!!
後半の、10ページに及ぶ原始人との戦いや、岩石ジェットコースターの描写などは、こういうノリが好きで好きで好きでたまらな〜い人もおりますでしょうが、私の趣味ではありません。
ジャケットを観賞するだけにとどめておいた方がいいと思います。
2010年12月下旬 執筆
2013年7月4日 改稿・ページ作成
2015年11月15日 改稿
2021年5月22日 加筆訂正