谷ゆきお「死皮ごろも」(220円)



「中川家のおババは偏屈もので、嫁の久子と喧嘩ばかり。
 持病持ちなのに病院にも行かず、妙な新興宗教に凝っていた。
 ある日、孫の真砂子から「霊光術祈祷所」というものを教えられる。
 祈祷所の主人は紫方路恵光という娘で、行ってみた所、霊験あらたかでおババはすっかり感動。
 足しげく通うが、おババにはもう一度、若返りたいというひそかな願いがあった。
 すっかり恵光と懇意になった頃、おババ祈祷所を訪ねたら、「本日霊休日」であった。
 自分には会ってくれるだろうと中に入ると、浴場で、奇怪な容貌の男が入浴しているのを目にする。
 男はおババを殺そうとするものの、秘密を守り、言いつけに従えば、命は助けてくれるだけでなく、おババの願いも叶えてくれるという。
 男と入れ替わりに現れた恵光は、おババに奇妙なビニールのようなものを渡し、それを身に付け、湯船に全身浸かり、三百数えるよう指示する。
 言われた通りにすると、おババは若い娘へと変身していた。(もとに戻るにも同様の手順を踏む。)(注1)
 恵光に言われ、おババは「由実かおり」という名で、女中として中川家に入り込むのだが…。
 紫方路恵光の思惑とは…?
 そして、「皮ごろも」の秘密とは…?」

 今、真に注目されるべき、谷ゆきお先生。
 東京漫画出版社に残された「奇談シリーズ」は珍作・怪作が目白押しで、今読んでも抜群に面白いものばかりです。(注2)
 様々なジャンルの作品がありますが、この「死皮ごろも」は「ホラーSF」で、より詳しく説明すると、みんな大好き「侵略もの」!
 内容は「宇宙人が人間の皮をかぶって、すり替わっていく」というものですが、谷ゆきお先生の手にかかれば、侵略ものに姑問題やら新興宗教やら温泉旅行やらが盛り込まれて、ホラーSFなんだけど、妙な違和感だけが募っていきます。
 でも、これ、めちゃくちゃ面白い!
 当時としては、みんな大好き(なのか?)岩浪成芳先生の作品と並ぶ、妙チクリンなホラーSFではないか?と考えております。
 ちなみに、この作品は、おババの垂れ乳をフィーチャーしており、その点でも特筆すべきかも…。(そのスジの嗜好の方は是非とも読まれて下さい。)

・注1
 いばら美喜先生の名編「ばばっ皮」では「若い娘がおババになる」シーンがあります。逆バージョンなんですね。

・注2
 ただし、ヤフ※クでは、もの凄い高値になってしまっているので、読むことは非常に困難です。
 専門店某M様、復刻してくだされ〜。

・備考
 カバー欠。前後の見開き、タイトルページ(p5)、最終頁に貸本店のスタンプ。後ろの見開きにペンによる書き込みあり。

2020年9月23日 ページ作成・執筆

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