しきはるみ「怪談継母ガマ女」(220円/1965年頃?)
「雪の降る夜、一夜の宿を求めて、尾方家を訪ねて来た女性、由美子。
彼女は天涯孤独の身で、住み込み女中の職を訪ねて、この町にやって来た。
しかし、結局、仕事は見つからず、鉄道自殺をしようとしたところを、緒方家の娘、康子に救われる。
菊子と康子の姉妹の説得により、由美子は女中として、緒方家で働くこととなり、一月後、緒方家の母として籍に入る。
由美子は美しく、優しい性格で、姉妹は大喜び。
しかし、由美子は、冬のある日、姉妹の父親に命を救われたガマの化身であった。(だから、ヘソがない。)
由美子は甲斐甲斐しく緒方家に尽くすが、人間社会の複雑さ、悲惨さを目の当たりにすることになり…」
状態が猛烈に悪いとは言え、どうにか入手しましたので、よ〜やく紹介することができます。(注1)
「怪談継母ガマ女」という、冗談としか思えないタイトルと表紙のインパクトは貸本の中でもトップクラスに位置し、皆様方の期待をガンガン煽るものと思います。
しかし、内容はそこまで衝撃的ではありません。
第一、怪奇色は皆無と言っていいです。
肝心のガマ女からして上の中央と右の図のような感じで、人を怖がらすには程遠いです。(変身シーンは更に脱力。)
更に、物語の中盤から、ガマ女は脇役に追いやられ、尾方家の菊子と、下請け会社の息子、健太郎の淡い恋物語へとシフトしちゃいます。
以降は、中小企業残酷物語がメインテーマとなり、倒産を苦に健太郎の両親は自殺、健太郎は東京へ働きに出る…というヘビーな展開となります。
その間、ガマ女は静観するしかなく、取って付けたようなラストで〆。
という感じで、ちっともガマ女の活躍の場はなく、最初、読んだ時、呆気にとられました。
結局、この本で一番ホラーなのは、表紙の、気色の悪いガマ女のイラストだと思います。
というワケで、怪奇マンガとしてはビミョ〜な出来なのでありますが、社会派ドラマとしては力が入ってます。
新聞記事をコラージュして、現代社会の悲惨さを訴えており、しきはるみ先生の本気が伝わってきます。
だからと言って、作者も登場人物も皆、無力な存在なのでありますが…。
ちなみに、この作品で、私が最も衝撃を受けたのは、ガマ女が妊娠して、苦悩するくだり。
「怪談継母たぬき女」ではぎりで回避しましたが、この作品では遂にヤッてしまいました。
如何に美人とは言え、その正体は両生類のガマ…想像すると、身体中にブツブツができそうです。
異種婚姻譚は数あれど、カエル女を妊娠させたのは、なかなか凄いのではないでしょうか?(作中で子供が産まれなかったのが惜しまれる…こともないか…)
・注1
この本もどうやらいろいろな人の手を渡って来たもののようです。
そう考えると、感慨深いものがあります。
・備考
ジャンクに近い。ビニールカバー貼り付け、また、一部、ビニールが剥げ、カバーに痛み。糸綴じあり。読み癖ひどくて、ボロボロ。シミ、汚れ、切れ、小欠損、非常に多い。pp39〜42、pp81・82、コマにかかる欠損。前の遊び紙の裏に鉛筆でぐるぐる描き。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2019年5月28日 ページ作成・執筆