三田京子「黒髪の墓」(220円)



「ある村で連続して起こる、若い女性の惨殺事件。
 何百年も前、その村では火の神に若い娘を捧げる風習があり、捧げる娘のいる家には目印として白羽の矢が立つことになっていた。
 その白羽の矢が現代になって、突如復活。
 悪戯と思い、何もしなかった家は、火事に見舞われ、娘は焼死してしまう。
 これも火の神の祟りと、白羽の矢が立った家は、娘を棺に入れ、夜の神社に運び込む。
 しかし、翌日には髪をむしり取られた死体となって、発見されるのであった。
 一方、隣村には、小菊という美しい娘がいた。
 小菊は、ひろしという、学生服の青年に出会い、一目見て惹かれる。
 どうにかひろしとお近づきになりたいと思うものの、ひろしの態度はどこか固く、よそよそしい。
 そして、ひろしの周辺をうろつく、気味の悪い老婆。
 ひろしの恐ろしく、忌まわしい秘密とは…?」

 ネタバレですが、内容的には、ハーシェル・ゴードン・ルイス「悪魔のかつら屋」(1966年)に、芥川龍之介「羅生門」を一さじ、振りかけたものです。
 タイトルの「黒髪の墓」は本編には出て来ず、後記にて説明しております。
 貸本らしい、いい塩梅のテキト〜加減ですが、このマンガに出てくるひろしが紛うことなきサイコ(キチガイ)なのは、ちょっとテキト〜が過ぎるかも…。
 我慢できないので、ばらしちゃいますと、死体の黒髪を抜いたトラウマから、女性の黒髪に憑りつかれ、無意識のうちに、女性の黒髪を剥ぎ取って、殺してしまうというのが、男主人公のひろしなのです。
 こんな男にヒロインは何故ハートを捧げてしまうのか、いまいちよくわかりませんが、まあ、「純愛」とはそういうものなのでしょう。(「純愛」とやらをした経験がないので、想像がつきません。)
 それにつけても、初期の三田京子の描く、女の子が可憐かつ風情があって、いいです。
(後に「美少年」もので人気を得る頃の絵は、顔全体がゴテゴテしていて、正直なところ、苦手です。)
 また、妙に「ぽえみ〜」な描写が唐突に挿入されるのも、味わい深いなあ〜。



 恐らく、自作のポエムでしょうが、あまりの自己没入度に他人が口を出す隙間は微塵もありません。
 出来不出来はともかく、とことん「個人」の作品だとつくづく思います。

・備考
 ビニールカバー貼り付け、それによる本体の歪み、若干あり。糸綴じあり。前の遊び紙がタイトルページの一部に貼りつき、剥げ。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付け。pp36・37、目立つ汚れあり。

2016年6月18・21日 ページ作成・執筆

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