三田京子「怪談夜の白粉花」(220円)



「結婚式を脱け出し、嫁ぎ先の家から逃げ出した、美夜(16歳)。
 彼女は、継母により、強制的に結婚させられたのであった。
 途中、乙女峠で力尽きた彼女は、夜、美しい少年に介抱されて、意識を取り戻す。
 美夜は逃げるようにその場を立ち去り、二度と嫁ぎ先に戻ろうとはしなかった。
 それから、一年経ち、また夏が巡ってくる。
 美夜は庭に一輪の白粉花を見つけ、それを丹念に世話をする。
 彼女は白粉花に、一年前に出会った美少年の面影を見出していた。
 白粉花はどんどん繁殖し、それに惹かれた毒蛾が大量に舞うようになる。
 ある日、継母の娘、まゆみが毒蛾の毒にやられて、急死。
 継母は白粉花と毒蛾を根絶やしにしようとするが、美夜は継母から白粉花を守り抜く。
 ある夜、白粉花の咲き乱れる中に、一年前に出会った美少年が現れる。
 夜になると、彼は姿を現わすが、二人でいるところを継母に目撃される。
 だが、継母の問いに対して、少年は名前すら語ろうとしない。
 以来、少年は現れなくなり、熱を出した美夜は床に臥せるようになる。
 美少年の正体とは…?」

 個人的に、残念な作品です。
 まず、ヒロインに全く感情移入ができませんでした。
 このヒロインがわがままを押し通すたびに、周囲は何らかの被害をこうむっており、非常にはた迷惑な存在なのです。
 それにも関わらず、「自分の気持ちに嘘はつけない」を理由に、自分を絶対に曲げません。
 と書けば、立派なようですが、そのせいで小さな女の子が死んでしまっているので、ちっとも感心できません。
 ヒロインを厄介払いしたくて仕方のなかった継母に(作中では悪者扱いですが)同情してしまいます。

 あと、作品的には構成に難があると思います。
 基本的なテーマは、ネタばれすると、ヒロインと毒蛾少年との恋物語なのですが、更に、ヒロインの実母の呪いを盛り込もうとした節があります。
 しかし、それが中途半端に終わり、ストーリーを混乱させるだけに終わっております。(「妖女の奏でる夜想曲」と同じパターンです。)
 ラストもすっきりせず、モヤモヤした感じのみ読後に残ります。

・備考
 状態悪し。ビニールカバー貼り付け、また、それによる本体歪み。カバー背表紙上部、欠損。糸綴じあり。本がボロボロ。読み癖ひどし。全体的にシミ、汚れ、切れ、欠損多数。p9、コマ内に落書きあり(右上の画像を参照のこと)。pp19・20、コマにかかる欠損。pp78・79、pp130・131(読者コーナーと予告)、食べカスか何かでページ同士が貼り付き、剥がれあり。前の遊び紙、下半分欠損。後ろの遊び紙にスタンプと記入あり。

2018年1月12日 ページ作成・執筆

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