三田京子「千変化の乙女」(220円)



「星が光り輝く夜、千が浜にて、幸夫は、海の彼方から飛び来った白鳥が、世にも妙なる美女へと変身する様を目撃する。
 乙女は羽衣を外し、水浴びをすると(でも、服は着たまま)、再び白鳥に姿を変え、飛び去る。
 彼女に一目惚れした幸夫は、次の機会に、彼女の羽衣をこっそり持ち去る。
 その夜、嵐が訪れ、乙女の身を案じた幸夫は、海岸に駆け付けると、彼女は波に飲まれようとしていた。
 どうにか二人とも助かり、以来、乙女はその海岸で暮らすようになる。
 その間に、幸夫と乙女は互いに思慕を深めていく。
 だが、乙女は幸夫の隠していた羽衣を見つけ、白鳥の姿で海の彼方へ飛び去ってしまう。
 別れ際、白鳥は幸夫に、もしも愛情と悲しさで心揺さぶられる時は、グリーンスター島を訪れるよう告げる。
 とは言え、グリーンスター島はどこにあるか皆目わからない。
 幸夫が、乙女のことを想いながら、海辺で拾った貝殻を吹くと、目の前に、巨大な鳥が現れる。
 その貝殻は、ドーンライトといい、願い事を叶えてくれる、不思議な貝笛であった。(詳しい説明はなし!!)
 巨大な鳥で七つの谷を越え、次は、白鳥の船(公園の池にあるようなやつ)を出し、海の怪物と戦いながら、七つの海を渡る。
 そして、天馬で空を駆け、遂にグリーンスター島を目前とする。
 そこで、幸夫は黒衣に身を包んだ、聖界の乙女の大群に出会い、その中の老婆の手引きにより、その中に紛れ込む。
 ドーンライトを使い、様々な障害を乗り越え、遂に、目的の七番目の島に到着する。
 だが、彼の捜し求めていた乙女は、グリーンスター島を治める大魔王の娘、カミ―リア姫であった。
 そして、今、カミ―リア姫は、人間の男性を愛した罰として、牢につながれていた。
 幸夫とカミ―リア姫の愛の行方は…?」

 三田京子先生の絶頂期に発表された、奇想炸裂の怪作です。
 肝は、後半の「不思議な貝笛を使って、猛獣や怪物の襲撃を避けながら、聖なる島を訪れる」描写です。
 当時の貸本マンガとしては、谷ゆきお先生のマンガに匹敵する破天荒さだとは思います。
 ただ、惜しむらくは、三田京子先生は基本が「純愛もの」ですので、「怪獣」マンガと呼ぶには、中途半端な出来かもしれません。(まあ、怪獣マンガを描きたかったワケでもないでしょうし…。)
 あと、三田京子先生のマンガ(だけでなく、貸本マンガ全般)によくあるように、伏線をろくに張らずに、後になって、長文で一気にストーリーを説明することが多いのも、気にかかります。(構成に難があると、読んでいて、スッキリしません。)
 それでも、いろいろな作品の影響を、キメラの如く、継ぎ合わせた、この「キテレツさ」は色褪せることはないでしょう。
 そして、後記では「大自然の中でしか美しい心、愛情は育たない」云々と述べられております。
 ワケ、わかんねェ!!

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり(頑張って剥がしました)、また、袖にビニールカバー残り。ビニールカバー貼り付けによるカバーの歪み、若干あり。糸綴じあり。後ろの遊び紙に折れと貸出票の貼り付けあり。

2017年4月11日 ページ作成・執筆

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