森由岐子「ゆうれい駕籠」(220円)
「乾物問屋の磯屋。
主人は病で床に臥せ、番頭の七兵衛が店を取り仕切っていた。
七兵衛は、主人の娘、お俊を嫁にもらって、店を継ぎたいと願っていたが、お俊は新入りの与の助に夢中。
しかも、親バカな主人は、娘に与の助との結婚を許してしまう。
これで収まらないのが七兵衛で、彼は夜中にお俊の部屋に忍び込み、彼女の化粧品に劇薬を仕込む。
これによって、お俊の顔は醜くただれるが、漢気のある与の助は、自分がお嬢様を彼女の敵から守ると、逆に結婚の申し出を受けてしまう。
そこで、七兵衛は与の助の殺害を計画。
彼の真意を知っている、女中のお勝と協力して、婚礼の日に与の助を毒殺する。
お俊は悲嘆に暮れ、部屋に閉じこもるようになり、間もなく、店の主人は亡くなる。
ある休みの日、皆がいない隙を見計らって、七兵衛とお勝はお俊を拷問し、遺言書を書かせる。
その後、お俊を裏庭の井戸に投げ落とし、彼女が自殺をしたように見せかける。
当然、騒動となるが、何故か、井戸からは、お俊の死体は見つからなかった。
三年後、七兵衛は磯屋の主人となり、お勝と夫婦になる。
だが、店に関して、ある奇妙な噂が立ち始める。
それは、夜更けに駕籠屋が、若い娘を磯屋に運んでいくと、娘の姿が忽然と消えているというものであった。
更に、その娘の顔は醜くただれているらしい。
七兵衛とお勝は、お俊の幽霊だと怯えるのだが…」
この作品には一つ、面白い点があります。
それは「幽霊が駕籠に乗って、目的地まで行って、消える」というもの。
これって都市伝説の「タクシー幽霊」と同じパターンです。
江戸時代にも、こんな話はあったんでしょうか?
昔の怪異譚に詳しい方がおられましたら、お聴きしたいものです。(注1)
・注1
都市伝説を扱った名著、ジャン・ハロルド・ブルンヴァン「消えるヒッチハイカー」(新宿書房/1988年10月1日発行)の「2 自動車にまつわる古典的伝説」(p63)によると、19世紀後半〜20世紀前半には、「消えるヒッチハイカー」が馬車や馬に乗ったりする話があるという。
だったら、「駕籠乗り幽霊」がいたって、おかしくないかも。
・備考
ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。pp15・16、下部に裂けあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2021年1月6日 ページ作成・執筆