望月みさお「ゆうれい鬼女」(220円/1966年頃)
「原はつ江は孤独な少女。
あくどい金儲けに手を染め、性格の変わってしまった父親。
小金持ちになった途端、高慢ちきになった母親。
父親に取り入る、卑屈な赤池専務。
誰もがはつ江を心から愛してはくれない。
家では自分の居場所を見つけることができず、外をうろついている時、はつ江は足に怪我をしてしまう。
そこへ若い女性が通りがかり、はつ江の怪我を丁寧に看てくれる。
はつ江はその女性に姉のような優しさを見出し、もう一度、会いたいと願う。
後日、その女性、立花節子と再会したはつ江は、節子の家を訪れる。
節子の家にずっといたいと言う、はつ江に、節子は快く承諾するが、節子にはある考えがあった。
実は、節子の両親は、はつ江の父親によって会社を乗っ取られ、失意のどん底で病死していたのだった。
節子が原家の屋敷を探ると、原家でははつ江が誘拐されたと大騒ぎの最中。
そこで節子は病死した自分の母親と間違えられたのを幸い、節子は恨みあまりある原はつ江の両親と赤池専務を幽霊に扮して脅すことにする。
面白いように、はつ江の両親や赤池専務は幽霊に怯えるが、節子の前に、本物の母親の幽霊が現れる。
母親の幽霊は、節子に、復讐をして自分の気持ちが満足するのかと問いかけるのであった…」
この絵からは想像できないでしょうが、望月みさお先生は「サインはX」「ゆうひが丘の総理大臣」等のヒットを持つ、望月あきら先生の実兄とのことです。
貸本マンガ・マニアの間では、東京漫画出版社から「実話少女怪談」シリーズを描いてたことで高名です。
どこどこで何某と言う人に起こった「実話」というのが売りなのですが、どこをどう見てもデタラメかました内容です。
とは言え、元祖「実話怪談」を前面に出したのは初だと思いますので、怪奇マンガ史にちょっぴり望月みさお先生の名が刻まれる価値はあるでしょう。
ちなみに、こういうことを書くのは心苦しいのですが、絵は決して上手くありません。
何と申しましょうか、登場人物の「鼻の穴」ばかり気になってしまうような絵柄なのであります。
だからと言って、それだけでは終わらないのが、貸本マンガ家の底力。
登場人物の心象風景を、テキト〜に描き殴った描線で、(こういう安直な形容はしたくないのですが)シュールに表現しておりまして、そのブロークンぶりがたまに「ア〜ト」にまで(多分)達しております。
また、ラストに近づくにつれ、登場人物の苦悩や葛藤をどうにか表現しようとしたのでしょうか、テンパり度は天井破りのレベル!!
新鮮味のあるとは言えないストーリーを大した関心もなく追っていたら、眩暈のするような体験ができるという、なかなか「クセモノ」なマンガであります。
私の説明では言葉足らずでわかりにくいと思いますので、下の画像でその「ブロークン」ぶりの片鱗を味わってくださいませ。
・備考
ビニールカバー貼り付けによる本体の歪み、ひどし(ビニールカバー、自分で剥がしました)。ビニールカバー剥がし痕あり。ビニールカバーが袖等に残り。糸綴じあり。前の遊び紙の下角、一部欠損。後ろの遊び紙に貸本店のスタンプ等あり。
2016年9月26日 ページ作成・執筆