西たけろう「怪奇 血のしたたり」(250円/発行年月日不明)



 収録作品

・「怪奇巨人阪神戦」
「巨人軍の背番号90、新藤隼人。
 彼は話題の選手として注目を集め、MVPを狙っていた。
 だが、練習のボールが後頭部に当たった際に、中枢神経障害を起こし、選手生命は絶望視される。
 飲んだくれる彼は、以前、バー「かけひ」のママから聞いた話を思い出す。
 店名の「かけひ」は、信州地方の民話に出てくる神で、命と引き換えにどんな願いでも叶えてくれると言う。
 彼はバーのママに頼んで、信州の山奥にある社(やしろ)に行き、復帰を祈願するのだが…」

・「怪奇・T局ボーリング選手権」
「ボーリング・プロ、木曽慎太郎は、練習ではパーフェクトだが、ナーバスさ故に、本番ではからっきしであった。
 ある時、彼は、親友の渡辺が今まで、試合での妨害工作を指示していたことを知る。
 T局選手権で、彼は渡辺を打ち負かそうと奮闘するものの、致命的な病気、先端恐怖症の発作が出てしまい、最終フレームにて、ファウルにガーターと続けてやってしまう。
 優勝を逃したばかりか、八百長プレイヤーのそしりを受け、更には、渡辺に詰め寄るも、ナイフを前にしては手も足も出ず、木曽は雨の中、渡辺を呪いながら、気を失う。
 目が覚めると、全裸の美女が彼の横に横たわっていた。
 そこは彼女の部屋のベッドで、彼女は彼と渡辺のことを全て知っているような口ぶりであった。
 そして、彼女は、先端恐怖症を克服するには「一度死ぬこと」だと彼に告げる…」

・「怪奇近鉄阪急戦」
「近鉄バッファローズのピッチャー、渡瀬。
 彼は好不調が極端で、今は絶不調の時であった。
 後輩の後塵を拝し、婚約者には愛想を尽かされ、彼は煩悶する。
 ある日、火事に出くわした彼は、血や炎といった赤い色がストレス発散になることに気付く。
 以来、部屋で兎を飼い、その血を日々浴びるのだが…」



・「怪奇東京競馬場」
「徹底して競馬のことしか考えない騎手、旗野慎一。
 彼のもとに、久美という女性から電話がかかる。
 久美は彼が三年前に関係した女であった。
 しかし、人間的な情愛関係を望まない旗野によって、一方的に捨てられたのである。
 再会の後、旗野は何も考えず久美を抱くが、こっそり大量の幻覚剤を飲まされる。
 また、幻覚剤が抜けた後も、久美は毎晩九時に彼に電話をしてくるようになる。
 心身ともに憔悴しながらも、旗野は執念で、レースでの十連勝を目指すのだが…」

・「銀賞堂事件」(実在の事件をヒントに創作した作品とのこと)
「老富豪が殺害され、五億円の宝石が奪われるという事件。
 最有力な被疑者は、彼と馴染みがあったホステス、深沢みどりであった。
 彼女にはアリバイがなく、事件現場には彼女の血液型と同じ唾液が付いた煙草の吸殻が落ちていた。
 彼女の血液型は「A・O型」という非常に稀なもので、これだけで彼女の有罪は決まったようなものであった。
 しかし、彼女のアリバイを証明する人物が現れ、みどりは無罪釈放。
 彼女はまたホステスの仕事に戻るが、数週間後、宝石店の銀賞堂社長、高木正道という老人から、養女の申し出をされる。
 みどりは養子に来たものの、高木はすぐに彼女に冷たくなり、まともに口をきくことさえない。
 一方で、刑事達は銀賞堂が怪しいと睨み、強盗殺人事件の解決の糸口を探るのだが…」

・「首」
「通りすがりの男女を庭に設置したギロチンで殺害した事件。
 被告は、刑務所の臨時看守員、坂田竜一。
 裁判で、彼が如何に「臆病で小心で無能な」死刑執行人であったのかが明らかになっていく。
 何が彼をギロチン殺人へと駆り立てたのであろうか…?」

 「怪奇巨人阪神戦」等の奇抜なタイトルから、さぞかしキテレツな内容なのか?と思うでしょうが、そこまで奇抜なものではありません。
 実に、西たけろう先生らしい、心理サスペンスに重点を置いた作品が多いです。
 また、人によっては、当時の風俗描写に懐かしさを感じる方もいるかもしれません。(私は、野球も競馬もボーリングも興味がないので、ちっともわかりませんが…。)

・備考
 カバーに痛みや折れ。本体には経年のシミや汚れ。

2019年8月18日 ページ作成・執筆

東考社・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る