山上たつひこ「やってきた悪夢たち」(240円)


 収録作品

・「やってきた悪夢たち」(1969年4月2日完成)
「2062年、トウキョウ。
 科学万能の世の中に、奇怪な事件が相次ぐ。
 雑誌記者に寄せられた、小川で一寸法師を見たという報告。
 大都会の上空に浮かぶ、翼の生えた鯨。
 町中で突如、繰り広げられる、宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘、etc,etc…。
 これらの怪事件が、浄水場での宿直員の殺人事件とつながった時、意外な事実が明らかとなる…」

・「冷たい村」
「原始的な生活を送る村。
 村人達は「氷の洞くつ」で、奇妙な物体を発見し、それについて協議する。
 それは天井近くの岩盤に挟まっており、とりあえず、食べられるものではない。
 若いカップルのラムとテラはその奇妙な物体を調べようと、氷の洞くつに向かう。
 テラはどうにか、その物体の内部へと入るのだが…」

・「お味はイカガデス?」(1966年12月頃)
「沼谷は火星観測特派員。
 単調な生活の中、彼が最も我慢できなかったのは、食べ物が完全栄養食の白い錠剤だけということであった。
 手作りの料理を腹いっぱい食べたいと願っていた時、調理ロボットが地球からロケットで運ばれてくる。
 沼谷はロボットに「エイサク」(総理大臣から命名)と名付け、それから、数か月、ロボットの素晴らしい料理を堪能する。
 しかし、物資輸送ロケットの故障により、料理の材料が底を尽いてしまう。
 エイサクは材料を探しに出かけるが、途中、事故で回路がいかれてしまい…」

・「二人の救世主」
「2117年、日本中央歴史研究所所員の関国夫と香沼は、日本におけるキリスト渡来伝説を調査するため、タイム・マシンで二千年前に飛ぶ。
 まずは、キリストが誕生する前の紀元前五年のベツレヘムを訪れるが、そこで意外な事実が判明。
 キリストの父、ヨゼフは、イスラエル秘密航時組織のメンバー、ジュダであった。
 彼は、ユダヤ人迫害の発端ともなった、キリストの死、また、ユダの存在を確かめるため、この時代に飛んできた。
 しかし、タイム・マシンを事故で失い、この世界をさまよううちに、キリストの母となるマリアと結ばれたのであった。
 キリストの両親を確かめた後、関と香沼は、キリストが処刑された、紀元三十年のエルサレムに向かう。
 そこで、彼らはユダに会いに行くが、彼らと同じく、ユダの後をつける女性がいた。
 彼女の正体は…?
 そして、裏切者ユダにまつわる真実とは…?」

 山上たつひこ先生がSFを描いていた時代の作品を集めた単行本です。
 「やってきた悪夢たち」と「二人の救世主」はズバリ、傑作です!
 細かいところを突けば、不備はいろいろとあるでしょうが、ストーリーの面白さでぐいぐい読ませます。
 これってやっぱり、天賦の才能なのでしょうか?

・備考
 貸本使用。ビニールカバーの剥がし痕あり。カバーの痛み・大(よれよれ)。本体の割れ、激しい。

2019年9月22日 ページ作成・執筆

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