西たけろう「世にも恐ろしい物語」(240円)


 収録作品

・「蛇女」
「氷河に覆われた洞窟の中、蛇女ゴーゴンが、200年ぶりに眠りから目覚める。
 眠っている間にまた皺が増えていたため、ゴーゴンは若い娘の魂を食べようと考える。
 「氷のかがみ」に問うと、リンドグレーン家のチェストンとエリの姉妹の二人を鏡は映し出す。
 優しく大人しいチェストンと対照的に、妹のエリは活発なお転婆で、ゴーゴンはエリの方に狙いを定める。
 風に乗り、町にやって来たゴーゴンは、行き倒れの老婆を装い、リンドグレーン家にもぐりこむ。
 だが、首だけになって屋敷を探索していた時、首のない身体をエリに見られてしまい…」

・「とんでくる首」(「蛇女」の続き)
「仮装パーティで、エリはゴーゴンに拉致されそうになるも、十字架のペンダントで撃退。
 しかし、パーティ会場では全員、ゴーゴンの魔力により石に変えられてしまっていた。
 孤立無援のエリにゴーゴンの魔手が迫る…」

・「鬼」
「夜、雨の中をひた走る娘。
 交番にとび込んだ彼女は「ばけもの」に追われていると、巡査に助けを求める。
 しかし、巡査は、人間とは思えない容貌をしていた。
 逃げ出す娘を巡査が追うと、母親を名乗る女性が娘を捕まえる。
 巡査は母親に「(娘が)今はやりの一種のノイローゼみたいなもの」だと話し、彼女を病院に連れていく手筈を進める。
 病院では医者に「一時的な症状」と診断され、娘は家へと帰されるのだが…」

・「死亡広告」
「小学校高学年の頃、一条リカは、壁の中に新聞記事を見る。
 それには、異母兄の一条広が、空気銃の誤射で片目を失明する旨、書かれていた。
 兄を急いで壁の所に呼ぶも、新聞は消えてしまい、誰も信じてはくれない。
 だが、一年後、記事に書かれていた通り、広は片目を失明する。
 障害者になったことで、広は陰気になり、両親も財産を兄にしか遺さなかった。
 リカには洋裁店の夢があったが、広は片目を失ったのはリカのせいと思い込み、冷たくあしらうばかり。
 そんな時、彼女は再び壁の中に新聞記事を見る。
 それは、明日、彼女の兄は事故死するという記事であった…」

・「赤い竜」
「北原伸子という少女は、幼い頃、臨死体験をして以来、予知能力を得る。
 ある日、彼女のもとに、友人の三田静子が相談に訪れる。
 前日、犬の顔が人間の顔に変わるという出来事があり、父親がその犬を殺して裏庭に埋めたのであった。
 伸子は、これは悪い前触れだと指摘し、静子に急いで家に戻り、家から少し離れたところで叫び続けるよう指示する。
 彼女の言いつけに従い、静子の一家は難を逃れることができ、翌日、静子と父親が伸子にお礼を言いに行く。
 その際、家で起きた奇怪な現象について尋ねると、家の西の壁の下に眠っている「赤い竜」の仕業と伸子に教えられるのだが…」

・「予言者」
「老人の易者に、一週間の命と宣告された青年。
 易者は彼に「牙」に気を付けるよう忠告する。
 青年は死の恐怖に苛まされるようになり、大勢のガードマンを雇い、海岸の別荘の地下室を改装して、そこに閉じこもる。
 自分の身辺に厳重な警戒を巡らし、迎えた最終日…」

 「まんだらけZENBU・57」(2012年12月号/p112)によると、ホームランコミックス名義でなく、ブラックコミックのレーベル名で刊行されたとのことです。(ブラックコミックは恐らく、この一冊のみ。)
 そして、西たけろう先生のホームランコミックスでの第一弾らしいです。
 内容的には、少女漫画雑誌風怪奇マンガ(「蛇女」「とんでくる首」)、オチの効いたブラック・ユーモア風(「鬼」「死亡広告」「予言者」)、摩訶不思議系(「赤い竜」)とバラエティー豊かなのは流石。
 個人的には、「鬼」と「死亡広告」の出来が突出していると思います。

・備考
 貸本使用。カバー背表紙上部に欠損と裂け。割れ多し。後ろの遊び紙に紙の貼り付けあり。

2019年9月27日 ページ作成・執筆

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