桜井昌一「どうぞ天國へ」(190円)



「津田一郎はお金持ちの青年。
 母親は彼を産んだ時に亡くなり、その一年後、父親が交通事故死したため、爺やと共に暮らしてきた。
 ある日、彼は自分と瓜二つな男の存在に気付く。
 その男は彼の恋人に暴力を振るったり、友人から金を借りたりと、彼の評判を落とすようなことをしていた。
 そんな時、知らない女性から電話がかかってきて、明日の自動車レースに行けないと告げる。
 どうやらもう一人の彼が女性を誘ったらしく、この機会に一郎は自動車レースの会場に忍んで行く。
 そこでもう一人の彼を見つけ、後をつけると、山中の森の中に入って行く。
 森の中の家には、もう一人の彼と盲目の母親が住んでおり、息子の名は鬼太郎であった。
 母親の話から、一郎の父が財宝目当てに彼女の夫を殺し、彼女を盲目にしたことを一郎は知る。
 その父親が死んだので、母親は息子の一郎に復讐しようとしていたのであった。
 そして、一郎は殺人者の濡れ衣を着せられ、追われる立場となる。
 彼はこの母子を見つけ出して、無実を証明しようとするのだが…」

 水木しげる先生と関わりの深い桜井昌一先生。
 名前は知らなくても、水木作品による出てくる、眼鏡で出っ歯の「サラリーマン山田」のモデルの人と言えば、大概の人はわかるのではないでしょうか。
 辰巳ヨシヒロ先生の兄で、「劇画工房」のメンバーの一人であり、漫画史にきっちりと名を残してはおりますが、漫画はあまり上手くありませんでした。
 1ページ目の顔が一番よく描けていて、後は2・3ページの見開きページの絵みたいな感じです。
 でも、まあ、貸本をあれこれ読んでいると、これはこれで味があって良くなったりしますので、「慣れ」って怖いものです。
 なお、この作品は「世にも不思議な物語シリーズ@」とのことですが、二弾については確認できませんでした。
 ご存じの方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけますと幸いです。
 あと、余談ですが、主人公と瓜二つな人物がいる理由は夢野久作「あやかしの鼓」とほぼ一緒です。
 「あやかしの鼓」は親子が全く似てない説明でよく使われている気がしますので、意外といろんなところに影響を与えているのかも。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。経年の割りにきれい。(誰も借りなかったとか…。)

2023年12月29日 ページ作成・執筆

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