月宮よしと「怪談幽霊滝」(220円)
「飛騨の国(岐阜県)の山中に、幽霊滝という、人々から恐れられる渓谷があった。
そこは、天正十年(1582年)、平家の名族である江馬輝盛が八日町の戦いで三木自綱に敗れた後、輝盛の奥方、腰元、守護の武士が自害した場所であり、滝に近づく者はことごとく、怪死を遂げていた。
領民達は、幽霊滝の霊を鎮めるため、お滝大明神を祀り、以来、怪異は起こらなくなる。
十数年後のある夜、生糸を紡いでいる女達が幽霊滝の話をしているうちに、祟りが本当に鎮まったかどうか確かめようということになる。
今夜紡いだ生糸と引き換えに、お勝という女房が、お滝大明神に行く。
証拠に賽銭箱を持って帰ろうとすると、滝の方から三度、大きな声が彼女を呼ぶ。
お勝は急いでその場を立ち去るも、紡ぎ小屋に戻った時、背負っていた赤ん坊の首がもぎ取られていた。
夫婦は子供を亡くし、嘆き悲しむが、翌朝、彼らの家の前に、乞食琵琶法師が行き倒れていた。
これも仏様のお導きと、彼らは琵琶法師の世話をする。
琵琶法師の名は与一丸といい、琵琶の腕は絶品であった。
ある夜、夫婦は夜遅くまで働いており、与一丸が一人琵琶を弾いていると、一人の美しい女性が現れる。
彼女は、彼女の主人が彼の琵琶を聴きたいと、山奥の立派な御殿に彼を案内する。
与一丸はそこの奥方に平家物語を弾き語り、六日の間、続けて来るよう命じられる。
一方、お勝の夫は与一丸が日一日と憔悴していくのが気になって仕方がない。
夫婦はある夜、与一丸の後をつけ、彼が幽霊滝の中に入っていくのを見る。
そこで、夫婦は飯綱(いずな)使い(奇術師のようなものらしい)に相談するのだが…」
「幽霊滝の伝説」(鳥取県日野郡日野町が発祥地みたい)と「耳なし芳一」のカップリングです。
ただし、「耳なし芳一」のエピソードの方は、身体にお経を書くのではなく、「飯綱使い vs 平家の亡霊の変化たる蛙」という展開で、ちょっと驚きました。
こういう話も存在するのでしょうか?
・備考
ビニールカバー貼り付け。小口研磨。糸綴じあり。pp82・84・128(最終頁)、赤ボールペンにて落書き。後ろの見開きに貸本店の紙貼りつき。
2021年3月11日 ページ作成・執筆