「怪談別冊 時代特集H」(発行年月日不明/150円)



 収録作品

・小島剛夕「業火の島」
「父母の仇の海賊を探して、航海をする多四郎。
 その船が嵐に遭って、難破して、多四郎が流れ着いたのは、宿敵の海賊の住む赤目島であった。
 海賊の首領の娘、阿久里(あぐり)の懇願で命拾いした多四郎は、彼女と結婚するか、それとも、復讐を選ぶかどうかで心が揺れる。
 赤目島にある山の頂には、難破船の残骸があり、そこの竜神の目が赤くなると、島が沈むという言い伝えがあった。
 父母の仇をとるという苦渋の決断をした多四郎は、阿久里に竜神の目が赤くなければ結婚はできぬと告げる。
 が、阿久里は竜神に自分達が滅んでもいいから、目が赤くなるよう必死に祈るのだった。
 阿久里の一途な想いに心を打たれた多四郎は、復讐を捨て、彼女を選ぶ。
 そして、夜、こっそりと竜神の目を赤く塗るのだった…」
 怪奇ものかどうかは判断が別れるところですが、第一級のロマンであります。
 話自体は陳腐かもしれませんが、ラストの噴火のシーンのド迫力で全てを帳消しにします。
 あと、ヒロインの阿久里が個人的にはメチャクチャ好みです。少し黒目が大きすぎますが…。

・太田康介「悲壮の舞」
「美濃を支配する斉藤道三のいる鷲山城。
 その城の城郭に夜な夜な前城主の亡霊が出ると言う。
 道三の息子、義竜はそれを確かめに行き、前城主の亡霊と会う。
 亡霊は義竜を自分の息子であることを知らせ、道三に如何にして殺されたかを語る。
 秘密を知った義竜だが、道三はそれに感づき、義竜を亡き者にしようとする。
 道三の罠から命からがら逃げ切り、城に戻った義竜の運命は…?」

・清水良「黒い卍」
「島原の乱の後の長崎。
 切支丹への弾圧は熾烈を極める一方、黒卍という秘密結社が影で勢力を伸ばしていた。
 公儀隠密である小島剛助は百姓に化け、黒卍のアジトに潜入するが、そこで長い白髪に、白い髭を伸ばした、異様な老人に会う。
 老人はすぐに小島剛助の正体を暴き、剛助に術をかける。
 夢か現か、剛助の目の前に、彼と同じように公儀隠密として働き、行方不明になった父親が現れる。
 剛助の父は、秘密を守るためか、岩牢に監禁され、瀕死のところを黒卍に助けられ、切支丹に改宗したと告げて、消える。
 今のを夢と訝る剛助の目の前に、黒卍の女信者と名乗る女性が現れる…」

・福田三省「猫は見ていた」
「義賊を気取ってはいるが、実際は単なる極悪非道な盗賊の「鼠」。
 その鼠を追う、年老いた岡引は一度は鼠を捕まえたものの、鼠は脱獄、復讐として岡引は刺し殺される。
 岡引の娘は父の仇と鼠を追うが、家で飼っていた黒猫がいろいろと手引きをしてくれる。
 そして、黒猫は鼠の行く手に何度も現れ、鼠に破滅をもたらすのだった…」
「オール怪談・62」にて再録。

 この本の見所は小島剛夕先生の「業火の島」、そして、同じく小島剛夕先生による見開きの絵と目次の挿絵…と断言してしまっても、いいでしょう。
 また、表紙の素晴らしさも特筆ものです。(ビニールカバーにより、自然な色合いが楽しめないのが、残念ですが…)

 備考
 状態悪し。ビニールカバー貼り付け。それによる表紙歪み。糸綴じあり。pp11・12、下部に大きな欠損。pp9・10、下部に大きな切れ。また、切れ多数。裏に貸し出し表貼り付け。

平成26年8月15日 ページ作成・執筆

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