「怪談・34」(1961年頃?/150円)
収録作品
・いばら美喜「落雷」
「恋人を送るため、豪雨の中、車を飛ばす青年。
雷により車が爆発するが、二人とも一命をとりとめる。
尼寺を見つけた二人は、雨宿りに寄る。
が、そこには、人の生血を吸って生き永らえている尼僧が二人いたのだった…」
・小島剛夕「十六夜月」
「皐月のおぼろ月夜。
毎夜、裏町に流れる尺八の音色。曲は「十六夜月」。
この尺八を吹く梵論字(ぼろんじ/虚無僧のこと)の姿を捜し求める娘がいた。
以前、娘はこの梵論字に悪党の手から救ってもらったことがあった。
同じく、この梵論字を探す「先生」と呼ばれる浪人がいた。
梵論字にとって、浪人は親の仇であり、討つべき相手であった。
毎夜、尺八の音色を聞かされ、ノイローゼ寸前になった浪人は、自ら討たれに梵論字の前に現れる。
そこへ娘も駆けつけるが、二人の見た梵論字の正体とは…?」
「怪談・92」にて再録。目次の後の紹介ページを御覧になりたい方はそちらのページへどうぞ。
・サツキ貫太「棺の中の男」
「行方不明になったイヴォンヌを探して、巴里に出てきた青年。
彼はサーカスでタップダンサーとして活躍する傍ら、恋人の消息を探るが、手がかりは全くない。
ある日、劇場の支配人となのる伯爵が彼を訪ね、劇場に出演しないかともちかける。
巴里に定住しておいた方がイヴォンヌを探しやすいと考えた青年はその伯爵の館を訪ねる。
半ば強制的に一泊させられた彼は、夜、何かを叩くような音で眼を覚ます。
音のする方に向かうと、地下室に巨大な人間の像がいくつもある。
その一つはイヴォンヌの像だった…」
出来はあまりよくありません。
支離滅裂な内容です。「吸血鬼ドラキュラ」の要素が濃いですが、全く作品に活かされておりません。
ラストで、胸に巨大な十字架をブッ刺される伯爵の、あまりのブサイクっぷりのみ印象に残ります。
・多摩海人「消えた男」
「家の建設費用のために、会社の金を自分のものにした男。
それが原因で、会計係の男は自殺してしまう。
死人の口なしと安心しきっていたが、それから男の身体に異変が起こる。
それは、突然、地上から身体が消え、しばらく経って、また現れるというもの。
地上から消えている間、彼は「亡霊の国」へ行き、そこで会計係の亡霊をはじめ、亡霊たちのリンチを受ける。
一方、地上世界では「消える男」が大問題になっていた…」
SF怪奇といった風情で、なかなか面白いと思います。西たけろう先生の作品でありそうな内容です。
話も大きな破綻がなく、絵も決して上手くはありませんが、今の目からしても許容範囲内でしょう。
でも、それだけなら、平凡な作品として歴史に埋もれるだけです。
個人的には、「亡霊の国で、人魂に寄ってたかってタコ殴りにされる」描写だけでも、記憶される価値があるのではないか…そう思いたいなあ…。
備考
糸綴じあり。表紙の角に破れあり。染み多し。
平成26年8月20・22日 ページ作成・執筆