「怪談・58」(170円)



 収録作品

・いばら美喜「金色夜しゃ」
「大仏の前で結婚を誓い合った貫一とミヤ。
 しかし、二年後、ミヤはあっさり貫一を捨て、別の男のもとに走る。
 と言うのも、貫一は失業中で、ミヤは貧乏暮らしがイヤだったからであった。
 ミヤに散々バカにされた貫一は、一日だけでも五億円を持つことができたら、すぐに死んでも悔いはないと口走る。
 そこへ奇妙な男が通りがかり、意味深な含み笑いをして、立ち去る。
 翌朝、貫一のアパートを銀行員が訪ねてくる。
 銀行員が持参してきた通帳には、五億円と記帳されていた…」
 いばら美喜先生の作品には、女性不信が深く影を落としていますが、この作品もその一つです。
 女性に嘲笑される描写はやけにリアル。
 若い頃には一時ホームレスになったこともあるらしい、いばら美喜先生に、一体何があったと言うのでしょうか?

・小島剛夕「月満つる夜」
「平安の世。
 大納言大伴の宿祢(すくね)により配所となった父を見送りに来た石の上文麿。
 その帰り、竹藪の奥から流れ出る童歌を耳にする。
 友人と共に藪奥へ向かうと、そこでとても美しい娘が歌を歌っていた。
 父親が配所になって後、文麿の心はうつろになり、何事も手につかなくなる。
 ある夜、文麿が夜空を見上げると、そこには父の面影でなく、先日目にした乙女の面影を見る。
 寂しさに耐えかね、文麿は乙女のもとを訪ねる。
 そこには文麿を慕う竹の姫が、文麿が再び耳にすることを祈って、童歌を歌っていた。
 竹の姫、斯久世(かぐや)に「心の隙間」を埋めて、文麿は毎夜、なよ竹の藪に通う。
 文麿の使用人の爺は、あの藪に足を踏み入れて帰って来た若者はいないと言う里人の噂を聞き、文麿を止めようとするが、全く聞く耳を持たない。
 しかし、ある世を境に、文麿は斯久世のもとを訪れることを禁じられる。
 何故なら、斯久世は大納言の邸に上がることになったからであった。
 二人の愛は偽りであったのかと詰問する文麿に、斯久世は八月十五夜にまた訪ねるよう、涙ながらに答える。
 そうすれば、何もかもがわかってもらえると言い残し、斯久世は立ち去る。
 そして、八月十五日、満月の夜…」
 一読すれば、「竹取物語」をベースにしていることは一目瞭然です。
 が、ここに大胆不敵な新説が発表されました。
 それは「かぐや姫」=「吸精鬼」説!!
 本文中では、かぐや姫は「竹の精」とされており、自らの生を保つために、若者達から精気を吸いまくっていた様子。
 吸われた者は「しおしおのパ〜」となっております。
 更に、五月には「筍」になって、再生する予定だったと本文で書かれておりますが…ええっ!!かぐや姫が「筍」に?!
 そう言えば、筍が背中に突き刺さって、人が死ぬ、関すすむ先生の「七度尋ねて」なんかもありました。
 「筍」ホラー…新ジャンルの予感…(んなワケね〜だろ!!)。

・北風三平「或る画家」
「橋爪三郎は、肺結核を患う、天才画家。
 妹の支えで、どうにか絵を描き続けるが、病気は重くなるばかり。
 その三郎に目をつけている、一人の画商がいた。
 三郎が危篤で倒れた時を利用し、画商は絵を全て買い上げる契約を結ぶ。
 三郎の死を知った妹は、悲嘆のあまり、あやまって転落死。
 画商は、大々的に三郎の絵の展覧会を開くが、三郎と妹を描いた絵から、二人が脱け出してしまう。
 怪異はそれだけにとどまらず…」

・古賀しんさく「悪魔のような女」
「女性を描いた絵に惚れこんだ青年。
 ある日、崖から身投げをしようとしている女性を助けると、彼女は絵の女性であった。
 女性は、自分は復讐のために絵から脱け出してきたと話す。
 と言うのも、その絵を描いた画家が、ライバルの画家に殺されたからであった。  その復讐を果たしたものの、警察に追われる身では絵に戻れず、自殺しようとした、と女性は話す。
 青年は一肌脱ぐことを決め、女性が殺した画家の死体を始末するべく、現場に向かう。
 しかし、女性が殺したと話した画家はまだ息があり、青年は一計を案じる。
 帰宅した青年は女性に死体を始末したと話し、買ってきた額縁の絵の中に戻るよう女性に勧めるのだが…」
 ジョルジュ・クルーゾー監督の名作は関係なく、いつものヘンな話です…。
 スジが通っているような、通っていないような…まさに「古賀新一ワールド」。(サイコ〜だよ!!)

・備考
 カバー痛み。本文、シミ・汚れ多し。巻末と後ろの遊び紙、貸本店のスタンプ押印が幾か所あり。

2016年9月20・21日 ページ作成・執筆

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