「怪談・61」(190円)



 収録作品

・浜慎二「死を作る男」
「学生の江波おさむは、父親の危篤の電報を受け取る。
 急いで実家に帰るが、当の父親はピンピンしており、医者も身体には何の異常がないとのこと。
 おさむが父親に理由を問うと、近所に住む彫刻家の谷口が自分の彫刻を作ったからと説明する。
 この彫刻家に頭像を作られた人は皆、数日後に亡くなっていた。
 半信半疑のまま、おさむは谷口のアトリエを訪ね、そこで父親の彫像を目にする。
 そして、彫像に刻まれた日付通りに、父親は急逝する。
 谷口が次に作る彫像のモデルは…?」

・小島剛夕「月にうらみの待乳山(まつちやま)」
「初秋の十五夜、和泉屋の娘、美代は、父親が浅草句会に行くお供をする。
 父親を待つ間、月見をしながら、そぞろ歩いていると、ある池の淵で、菊之丞という青年と出会う。
 彼は東叡山の稚児(注1)で、毎月十五夜に、上人がこの近くの屋敷で読経を上げる際のお供をしていると言う。
 二人は惹かれ合い、満月の宵には、池のほとりで会うようになる。
 しかし、美代の変化に気付いた婆やに、二人の密会の現場を押さえられ、美代は謹慎、菊之丞は破門となる。
 故郷に帰る前に、菊之丞は美代に一目会うことを願うが、叶わず、美代と満月の夜を過ごした池に身を投げる。
 そして、迎える、望月の夜…」



・古賀しんさく「海底の美女」
「魚類の研究だけが生きがいの青年。
 女性には全く無関心で、一人気ままに暮らしている。
 ある日、珍しい魚を求めて、海に潜った時、女性の水死体を発見する。
 以来、彼は積極的に見合いをするようになるが、彼と見合いをした女性が次々と行方不明となる。
 怪しんだ友人は、スキューバダイビングの際、彼の後をつける。
 海底の洞窟で彼が目にしたものとは…?…」
 普通に考えたら、ありえない話なのであります。
 でも、古賀新一先生の手にかかると、荒唐無稽な話でも、マンガとして成立するのが、実にマジカル。
 オチも皮肉が効いていて、ブラック・ユーモアな佳品と言えるでしょう。
 ちなみに、タイトル表紙の女性は、バーバラ・スティール(「血塗られた墓標」)でしょうね。
 「ブラック怪談」(ひばり書房黒枠)にて再録。

・サツキ貫太「蘇ってきた男」
「13歳の時、故郷を家出して、殺し屋へ転落した立野博。
 彼は今、病気にかかり、東京の下町のボロ家で、クズ拾いの少年に養ってもらっていた。
 死期を悟った彼は毒薬を飲んで、自殺する。
 そして、彼は、彼になり代わって、故郷の母親に孝行してくれている刑事に恩返しをするのであった…」

・注1
 「岩波古語辞典」(1991年1月25日発行/補訂版第二刷発行)によると、「B天台・真言などの寺院で、貴族・武士の子供を預かって、俗体のまま学問させたり、給仕に使った少年。僧たちに可愛がられ、しばしば男色の対象とされた。」とのことです。
 後半の解説は必要なのか…?

・備考
 ビニールカバー剥がし痕、ひどい。カバー貼り付け、また、カバー背表紙の上下、欠損。p1と前の遊び紙が一部、くっつき、剥げ。。浜作品と古賀作品、目立つシミ多し。

2019年3月1日 ページ作成・執筆

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