「怪談・63」(1963年の暮れ?/190円)



 収録作品

・浜慎二「ああ無情」
「部長の娘と婚約が決まったサラリーマンの平賀。
 しかし、彼には前科持ちの弟がいて、平賀を脅迫しようとしていた。
 いざとなったらナイフで話をつけるつもりで、平賀は帰宅する。
 が、弟は見知らぬ男にすでに殺されていた。
 見知らぬ男は弟の腹を切開して、何かを探していたが、平賀を見ると、自分が人違いをしていたことを悟る。
 見知らぬ男は平賀に銃を突きつけ、平賀の腹に高価な宝石があると言うのだった…」

・小島剛夕「筑前草人形」
「筑前(福岡県の一部)の片田舎。
 くぐつ師の利助は、豊年祭りの帰りに、捨てられた草人形を拾う。
 利助は草人形に、幼い頃に失った母親の面影を見出し、非常に大切にする。
 ある日、道端で差し込みに苦しむ樟葉と言う女性を介抱するが、その女性は母親にそっくりだった。
 樟葉は利助のもとに暮らすようになるが、利助は樟葉を母親として見て、それに満足する。
 しかし、利助を想うお加代は嫉妬し、樟葉にそっくりな草人形を火に投じてしまう…」

・北風三平「純金の顔」
「ある植物園を訪れる、映画スターの小百合。
 交通事故で顔に大きな傷を負った彼女は、静かに休むために、幼馴染の健に会う。
 健は頭が弱いが、植物に関しては天才的だった。
 小百合は健が「千両箱」を薪に使っているのを見て、あちこち掘り返すと、「千両箱」が出てきた。
 しかし、中は黄金小判ではなく、ただの水。
 がっかりする小百合だが、健が水に両手を浸すと、その手が黄金に変わった。
 小百合はその水で健の身体を拭き、むりやりに水を飲ませる。
 そして、黄金に変わった健の身体を元手に、整形手術をして、映画界に復帰するが…」
 ギリシア神話のミダス王の話、もしくは、ドーデ「風車小屋だより」の中の「黄金の脳を持つ男」に影響を受けた話なのでしょう。
 ヘンな話です…。

・サツキ貫太「吹雪と風船」
「炭焼きを営む父と兄弟。
 兄は頭が良く、先生から高校進学を勧められる。
 が、時代錯誤な父親は息子を「日本一の炭焼き」にすると譲らない。
 弟は兄が高校に入れるよう、亡くなった母親に手紙を書き、風船に結んで、毎日飛ばすのだった…」

 読者のページに松森正先生のイラストあり(p132/小島剛夕先生の模写)。御本人の投稿なんでしょうか?
 それと、小島剛夕先生の「一言もの申す」(1963年11月10日付け)という文章があります。
 小島剛夕先生がつばめ出版を離れる云々のデマに関する抗議文なのですが、「悪徳出版社」ってどこなのか、非常に気になるところです。

・備考
 ビニールカバー剥がし跡あり。カバー痛み。糸綴じあり。p1(中表紙)、青ボールペンによる、「怪談」の文字内にひび割れの落書きあり。p14(浜作品)に青ボールペンによる落書きあり。pp4〜12(浜作品)、目立つシミ多々あり。

平成26年12月27・28日 ページ作成・執筆

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