「怪談・88」(220円)
収録作品
・浜慎二「足」
「新幹線の脱線による大惨事。
他の乗客を押しのけ、九死に一生を得た山野浩一は、足の立たない身体となる。
だが、実際は、足が立たない振りをしていただけであった。
彼は、新興宗教の信仰によって足萎えが治ると喧伝する。
大集会の日、信者やマスコミ関係者の注目する中、「奇跡」は起きる…」
元ネタは、ジョルジュ・ランジュラン「奇蹟」です(注1)。
この短編は恐らく「ミステリーゾーン」でドラマ化されており、浜慎二先生はそれを見たのではないかと推測しております。
原作では「ルルドの泉」が登場してますが、浜慎二先生の方は新興宗教が扱われておりまして、もしかして「○○○○」がモデル?
・小島剛夕「月と白鷺」
「藩校へ通う、菊地京之介。
その通り道に、白鷺の集まる池があり、その橋のたもとに美しい娘がいつも佇む。
ささいなきっかけから、京之介と鷺江という名の娘は打ち解け、相思相愛の仲となる。
だが、京之介は、藩政改革のため、隠密に江戸に向かうこととなり、鷺江に別れを告げることなく、出立する。
鷺江は彼を追って、江戸に赴くが、あいにく彼は大阪に出張中で、出会えぬまま、行き倒れる。
彼女はとある夫婦に助けられるが、彼らは悪党であり、魂胆があった。
夫婦は鷺江に掏摸を強要し、京之介に会いたいがために、鷺江は身を落とす。
鷺江が会いに来たことを知った京之介は彼女の姿を探すが、二人は思わぬ形で再会することとなる。
そして、鷺江が京之介への愛を貫いた時、彼は彼女の正体を知るのであった…」
・戸塚悠子「青い館」
「東京世田谷の一画にある青屋根の洋館。
医学生、宮原弘(注2)は、大学を卒業するまで、厄介になることになる。
この洋館の持ち主、宗方氏は父親の親友で、弘に居候を勧めたのであった。
この館で、彼はリカという少女と出会う。
彼女は彼に興味津々だが、宗方夫人や娘のみどりは彼女を叱咤し、追い払う。
館の使用人に聞くと、リカは宗方氏の最初の夫人の娘であった。
だが、母親と共にタクシー事故に遭い、母親は死亡、リカはショックで頭がおかしくなってしまう。
そのため、リカはひとりぼってで、家から出してもらえず、後妻の宗方夫人と連れ子のみどりは彼女を軽視して、精神病院に入れようと目論む。
そういう事情から、リカは、宗方夫人とみどりに敵意を燃やし、幾度と襲おうとしていたのであった。
だが、宗方氏にとっては血を分けた娘であり、自分の寿命が長くないこともあって、リカに全財産の入った宝石箱を託す。
その数日後、宗方氏はベッドで刺殺される。
凶器のナイフはリカのもので、リカは警察に連行される。
弘には彼女の犯行とは思えないが、状況証拠は全て彼女に不利であった。
そんな時、彼女が病院を脱走したという知らせがもたらされる…」
・注1
ジョルジュ・ランジュラン「蠅」(ハヤカワ文庫/1986年12月15日発行)に収録。
表題作の「蠅」はデビッド・クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」の原作ですが、内容的にはクラシック・ホラー「蠅男の恐怖」(1958年/頭と片腕が蠅になる映画)です。
「蠅」は1960年代中頃に「異色短編集」の一冊として出版されたようですが、この文庫本は「ザ・フライ」の公開に合わせたものです。
・注2
もしかしたら、水原弘のもじりとか?
戸塚悠子先生はファンだったのかもしれません。
・備考
カバー貼り付け。ビニールカバー剥がし痕と、カバーに痛みあり。小口下部にマジックで数字記入。糸綴じの穴あり。pp28・29(浜作品)、食べかすが挟まって、剥がれ。全体的にシミ・汚れ多し。
2017年11月1・2日 執筆・ページ作成