「怪談・92」(220円)
収録作品
・いばら美喜「虫ケラ」
「組長とその殺し屋に父親を殺された娘は、謎の老婆の助けを借りて、復讐を企てる。
その老婆は、人の顔を取り、別の人間に据えつける事ができるのだった。
娘の復讐は成功するが、その見返りとは…」
いばら美喜先生の「怪談」「オール怪談」における代表作は、私の読んだ限りでは、「みな殺し」「焦熱地獄」「大天才」「印画紙」あたりじゃないか?…と考えております。
私としても異論はありませんし、どれも腰が抜けるぐらい、面白いのですが、個人的なベストはコレです!!
まあ、昔のことですが、この作品を目にした時に周囲でいろいろとありまして、その時の滅入った気分が、この作品にそこはかとなく漂う虚無感とマッチしたようであります。
最後のページの鮮やかさは、いばら美喜先生の作品の中でもずば抜けているんではないでしょうか?
池川伸治先生の「風鈴」といばら美喜先生の「虫ケラ」だけは何度読んでも、飽きることがありません。心の作品です。
・小島剛夕「十六夜月」
「皐月のおぼろ月夜。
毎夜、裏町に流れる尺八の音色。曲は「十六夜月」。
この尺八を吹く梵論字(ぼろんじ/虚無僧のこと)の姿を捜し求める娘がいた。
以前、娘はこの梵論字に悪党の手から救ってもらったことがあった。
同じく、この梵論字を探す「先生」と呼ばれる浪人がいた。
梵論字にとって、浪人は親の仇であり、討つべき相手であった。
毎夜、尺八の音色を聞かされ、ノイローゼ寸前になった浪人は、自ら討たれに梵論字の前に現れる。
そこへ娘も駆けつけるが、二人の見た梵論字の正体とは…?」
「怪談・34」からの再録。タイトルページが見たい方はそちらのページへどうぞ。
・岩井しげお「根っ子は怒る」
「前衛生花を標榜する未来流の家元。
家元の悩みは、未来流を継ぐべき若師匠のこと。
彼は養子なのだが、遊びが過ぎて、スキャンダルが新聞記者の耳に入るまでになる。
家元は彼と絶縁しようとするが、興奮のため、脳溢血の発作を起こす。
若師匠は家元を見殺しにして、未来流を受け継ぐのだった。
そして、展覧会には、前の家元が作品に使う予定だった、人間の形をした根っ子を使った作品を出品する…」
・池川伸治「血邸(ちやしき)」
「上から見ると、人の形をしているような邸。
その邸に住む少女は、この邸が大好きだった。
ある雨の日、少女は、おぼろげな人影に「邸をこわさないでください」と頼まれる。
それ以降、邸に何かがあると、少女の身体に異変が起きるようになる…」
この本は「怪談・34」と扉絵と小島剛夕先生の「十六夜月」がダブります。
貸本マンガの終焉が近いこともあり、経費削減を図ったのでしょうか?
・備考
半世紀前の本にしては、状態はまあまあ。カバーにビニールカバーの剥がし痕あり。糸綴じ穴あり。p100から最終稿まで下隅に水濡れの痕。
平成26年11月17・18日 ページ作成・執筆