「怪談 増刊号(盛夏納涼特集)」(220円)



 収録作品

・鹿野はるお「お七の執念」
「寺小姓の吉三郎にもう一度会いたいがために、放火し、刑場の露と消えた、八百屋のお七。
 一方、寺に謹慎中の吉三郎は、その事実を知らないまま、三年が過ぎる。
 ある夜、彼の部屋に、お七が訪ねてくる。
 だが、それは夢で、吉三郎は、お付きの爺やに、お七の処刑について聞かされる。
 再び横になると、お七の幽霊が彼のもとに現れる。
 お七は彼に仇を討ってくれるよう乞い、彼は江戸に向かって旅立つ。
 どうも、お七は冤罪で処刑されたようなのだが…」

・小島剛夕「刺青」
「無宿者というだけで、身に覚えのない罪を着せられ、八丈島へ遠島となった芳太郎。
 幸い、二年で赦免され、恋人の志乃と再会する。
 芳太郎はもう一度、やり直そうと決意するが、彼の周囲には「まむしの伝三」の姿があった。
 岡っ引きの伝三は芳太郎を陥れた張本人であり、芳太郎をとことんまで追い詰めるつもりであった。
 芳太郎は様々な職場で必死に働くものの、伝三により前科者であることがばらされ、どこも長く勤まらない。
 ある時、質屋の老夫婦が殺される事件が起こり、刺青持ちの芳太郎に真っ先に嫌疑がかかる。
 芳太郎の身を案じる志乃の前に、伝三が現れ、芳太郎を助ける代わりに、商家への縁談を受けるよう持ち掛ける。
 愛する人を救うために、志乃はその提案を受け入るのだが…」
 「オール怪談・31」からの再録です。
 タイトル・ページと巻頭の紹介ページをご覧になりたい方はそちらにどうぞ。

・岩井しげお「おっ母あ」
「太郎は継母と折り合いが悪く、まだ一度も彼女を「おっかあ」と呼んでいなかった。
 父親が一月の人足仕事で出かける後、継母はいつもよりつらく当たる。
 彼女は自分を「おっかあ」と呼ばなければ、御飯を食べささないと言うが、太郎は強情を張る。
 しかし、空腹には耐え切れず、継母を「おっかあ」と呼ぶが、いくら呼んでも、「聞こえんなあ〜」(by 「北斗の拳」の獄長)。
 彼は家をとび出し、理解者の老人のもとへ向かう途中で、橋から転落し、溺死する。
 太郎が死んで、継母は陰でほくそ笑むが、耳にする音が全て「おっかあ」と聞こえるようになり…」



・関すすむ「雷神の壷」(注1)
「竹林正四郎は、志乃という娘と婚約していた。
 だが、志乃の兄は、竹林家の家宝である「雷神の壷」と引き換えにするつもりだったことが明らかとなる。
 正四郎は志乃もそれに一枚噛んでいたと立腹し、彼女を罵り、彼女の兄と決闘となる。
 争いの最中、志乃の兄はあやまって彼女の首をはね、自分も正四郎に斬られる。
 その際、不思議なことに、志乃の首が、正四郎の首の付け根に引っ付いて、離れなくなる。
 仕方なく、正四郎は、その首を風呂敷で隠し、旅に出るが、行く先々で騒動を巻き起こすことに…」
 関すすむ先生がまた、やってくれました!!
 稀に見る珍作だと思います。
 小泉八雲「ろくろ首」では、首の一つが袖に食らいついて、それがトラブルのもとになっておりましたが、この作品では首の後ろについて「双頭」状態に。
 しかも、その首が巻き起こすトラブルが、ホラーというよりもギャグになっております。
 特に、宿屋の風呂場のくだりはマヌケ過ぎて、感動いたしました。

・注1
 目次では「首」のタイトルになっております。何故…?

・備考
 状態、非常に悪し。ビニールカバー貼り付け、糸綴じあり。水濡れで本体ベコべコ、かつ、水濡れの痕あり。また、そのせいか、カビ(?)がところどころ生えて、黒ズミになっている(一番上の右側の鹿野作品の「タイトル・ページ」を参考のこと)。食べカスも多く挟まり、ウェットティッシュでこすったら、その部分が剥げた…(p12)。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり(かなり多くの方が借りております。)

2021年1月8日 ページ作成・執筆

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