小島剛夕「怪談真珠の墓」(220円)



 収録作品

・「怪談真珠の墓」
「昔、城があったと言われる、大きな沼と深い森を持つ、山奥の里。
 沼と森のある所は「白鷺の森」と言われ、それにまつわる伝説が語り継がれていた。
 数十年前、そこに城があった頃、城主の娘に、美しい姫様がいた。
 彼女は見目美しく、優しい小姓と愛し合い、幸せな時を過ごしていた。
 しかし、城が隣国に攻められた際、小姓は命惜しさに姫を捨てて逃げ、姫は悲嘆のあまり、城から堀へ身を投げる。
 その夜、燃え盛る城の上を、姫が大切にしていた白鷺の群れが悲しげに飛び回っていたと伝えられる。
 城なき後も、その沼と森には白鷺が数多く棲んでおり、村人達は白鷺を田の神とお遣いと信仰していた。
 ある日、里に住む次郎は、漁のために、白鷺の森の近くにまでやって来る。
 すると、次郎は沼の水底に大きな川真珠を見つける。
 真珠の素晴らしさに目を瞠る次郎に、それは「幸せの真珠」ですと話しかける者がある。
 それは美しい装いに身を包んだ、高貴な身分であるらしき姫様であった。
 姫様は、以前、次郎が白鷺の命を助けたことへの礼を述べ、真珠を持っていれば、幸せが巡って来ると言う。
 ただし、もし真珠を持っていることが人に知れると、一転して、不幸を招く、と忠告し、姿を消すのであった。
 その日以来、次郎の脳裏から姫様の面影が離れない。
 もう一度、会うべく白鷺の森を幾度となく訪れるが、会うことは叶わなかった。
 しかし、最初に会った時と同じ宵月の夜、遂に次郎は姫様と再会を果たす。
 姫は自分に近づくと不幸になると次郎を遠ざけようとするが、次郎は姫への愛情を吐露する。
 次郎の愛情に心を打たれ、姫様は次郎を、森の中にある立派な御館に案内する。
 そこで、多くの侍女にもてなされ、名香の漂う中、次郎は夢見心地のまま、姫様と素晴らしい時間を過ごす。
 夜になっても帰ってこない次郎を探して、村人達が白鷺の森にやって来ると、次郎は、両掌に載せた真珠をぼんやりと眺めながら、沼の中に立ちつくしていた。
 その際に、次郎の父親に真珠を見られてしまう。
 そして、悪友の源太にも…。
 次の宵月、再び次郎は姫様のもとを訪ねるのだが…」

・「二人静」
「承安四年(1174年)晩秋。
 鞍馬山から奥州平泉に向かう義経が、三河の国矢作(やはぎ)の里に差しかかった時の話。
 馬上の義経は、寺から流れる、妙なる琴の音を耳にする。
 その琴に合わせて、義経は笛を吹くが、琴を弾いていた姫は音についていこうとして、琴の糸が切れてしまう。
 弾けて飛んでいった琴柱(ことじ)を取りに姫が表に出ると、そこで義経と出会う。
 言葉も交わさずに姫はその場を去るが、矢作の長者、兼高の館で義経と再開する。
 姫は、矢作の里の長者、兼高の娘、浄瑠璃というものであった。
 酒宴の最中、酔い覚ましに河原をそぞろ歩いていた義経は、川辺に佇む浄瑠璃に出会う。
 義経は浄瑠璃に拾った琴柱をもらってもよいかと尋ね、お互いが「奇しき縁(えにし)」で結ばれたと浄瑠璃に語る。
 翌日、義経は源氏復興のために心を後に残しながらも、旅立つ。
 浄瑠璃は義経を想いを心に抱いたまま、彼の帰還を待つ。
 しかし、平家全盛の世、源氏の嫡流に想いを寄せるなど、もっての外。
 姫は乳母と家を出て、鳳来山の奥深くの粗末な草庵で暮らすようになる。
 浄瑠璃は義経の思慕だけを頼りに、幾年も待ち続ける。
 十年経ち、寿永二年、平家の権勢は衰え、源氏の世が到来しようとする頃…」
 「怪談・62」からの再録。粗筋紹介のカラーページをご覧になりたい方はそちらへどうぞ。

・「ファラオへの贈り物」(漫画でなく文章/執筆者不明/高岳春江・作画)
「エジプト王セイナス四世。
 三歳の時、視力を失った王は、何物にも関心を示さず、引きこもるようになった。
 ある日、王は美しき歌声を耳にする。
 歌声の主は、エチオピアから連れて来られた奴隷女、マリサであった。
 その日以来、マリサは王の眼となり、王は政治を執り始める。
 王の名声は高まり、遠くムー大陸から王妃を迎えようという話が出てくるのだが…」

 
2016年1月24・25・28日 ページ作成・執筆
2016年8月17日 加筆訂正

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