加藤礼次朗
「平次@」(1998年8月1日第1刷発行)
「平次@」(2000年8月1日第1刷発行)

 男根平次はその名の通り、巨大なイチモツそっくりの岡っ引き。
 子分の早耳の蜂五郎と共に、今日も江戸にのさばる悪と対決する…。

・「第一話 女殺し大江戸薬漬けの巻」(単行本@)
「珍保八年、江戸。
 快楽ヶ沼から一人の娘の死体が浮かぶ。
 娘は「運なしのお涙」で、とことん男運が悪い娘であった。
 最近は江戸一番の女たらし「手込めの慈五郎」とできており、平次が慈五郎を尋問する。
 慈五郎は彼女をクスリ漬けにしたことを自白し、その目的は肉林寺の尼にさせることであった。
 だが、お涙は尼になるのは嫌で、入水する。
 慈五郎の自白から、平次は肉林寺の箆君尼(へらくんに)が黒幕と知る。
 箆君尼は娘達をクスリ漬けにして、尼寺に集めているらしい。
 女房のお鈴を抱いた後、平次と蜂五郎は肉林寺に決死の潜入をする。
 箆君尼の目的とは…?
 女の身投げが江戸を揺るがす大事件へと発展する…」

・「第二話 はみだし野郎の挽歌の巻」(単行本@)
「珍保九年、真夏の江戸。
 夜鷹が相次いで惨殺される事件が起こる。
 犯人はかなりの剣の使い手で、被害者は皆、一刀両断されていた。
 五人目の捜査の時、「つぎはおまえだ」と刀で記された木の葉が見つかる。
 これを目にして平次は犯人が誰だか悟るが、それは平次の過去と深く関わりがあった。
 捨て子の平次は天才発明家、平田玄米に育てられるが、あまりに特殊な体型のために、深い孤独感に苛まされていた。
 更に、思春期に入ると、身体中に漲る性欲を抑えることができず、覗きを繰り返す。
 そんな彼の前に現れたのが、「早漏れの早介」という侍。
 彼は「千畳袋の玉吉」と「珍毛の陰三」と共に「はみ出し組」を結成し、平次にも参加を要請するのだが…」

・「第三話 女拓小僧 見参!!の巻」(単行本@)
「珍保九年、師走。
 美女の女拓を取る女拓小僧が江戸を騒がす。
 大奥のお珠の方までが被害にあい、年内に犯人を挙げられなけらば、町方同心は困ったことになる。
 しかし、江戸は美女が多く、誰に絞り込んだらよいのかわからない。
 そこで、蜂五郎は平次にあるアドバイスをする。
 それは、女拓小僧のような変質者は「初物喰い」を目指すであろうから、「一度も変態の被害にあってない美女」をマークするというものであった。
 ところが、江戸はいろんな変質者の宝庫。
 更に、大奥からつかわされた「紅十手」の「朱雀のお鳥」までもが平次の前に立ちはだかる。
 女拓小僧は彼女と何かの関係があるようなのだが…」

・「第四話 吉原艶上!!魔剣華魁丸の巻」(原案・脚本/中野貴雄)(単行本A)
「江戸最大の歓楽街『吉原』。
 ここは幕府の権威も通用しない別世界であったが、平次は美乃屋の恋川太夫より手紙をもらい、中に入る。
 恋川太夫は「花の吉原五人太夫」の一番人気であった。
 彼女は、仲の良かった玉菊が何者かに殺害され、その捜査を平次に依頼する。
 玉菊太夫は陰部を刀ですっぱり切断され、死体には血がほとんど残っていなかった。
 そして、彼女の腹部には「〇」という模様が記されており、平次はこれに目をつける。
 どうやらこれは伝説の妖刀「華魁丸」を暗示しているらしい。
 百年も昔、真面目な商人、佐野次郎左衛門は吉原一の美女、八つ橋に入れ込むが、身代が底を尽くと、彼女は彼をあっさり捨てる。
 佐野次郎左衛門は魔剣「華魁丸」を手に吉原に殴り込み、九十九人の遊女を殺害する、これが世に言う「吉原百人斬り」であった。
 その後、次郎左衛門は死罪になるも、八つ橋太夫はどさくさに紛れて姿を消し、魔剣も行方はわからないままで、今も仇の八つ橋太夫を殺し損ねた無念で彷徨っていると伝えられる。
 平次は次に標的にされるのは「花の吉原五人太夫」(玉菊が殺されたので実際は四人)のうちの誰かではないかと推測する。
 恋川太夫の他は
 魔津屋・魔風太夫〜岡場所あがりの叩き上げ。気は強いが、気風(きっぷ)の良さは吉原一。
 蘭歩亭・初潮太夫〜生娘っぷりが売り。まあ、一種のブリっ子。
 夢酔太夫〜痴呆状態でほぼリタイア。未来予知の能力に苦しみ、アヘン漬け。忘八組(吉原を仕切る男衆)の親分が面倒を看る。
 平次は自分は恋川を見張り、子分の蜂に遊女の格好をさせ、初潮太夫を見張らせる。
 だが、太夫同士のライバル意識や思惑、更に、幕府内の大きな陰謀が絡み、事件は予想を超えた展開を見せる。
 魔剣・華魁丸を持つ者は誰なのだろうか…?
 そして、夢酔太夫の予知が現実のものとなる時、吉原の地下に潜むものが姿を現す…」

 巨大な男根をした岡っ引きの活躍を描いた連作です。
 加藤礼次朗先生は「童子」でも巨大な男根のモンスターを描いており、そういうものに対する何らかの思いがあるのでしょうか?
 いずれにせよ、漫画がメチャクチャ面白いので、そういう愚問はどうでもよくなります。
 単行本@は「COMIC快楽天」1996年11月〜1998年3月号に掲載されたものを収録。
 遊女両断という豪快な残酷描写はあるものの、基本はキテレツなアイデアやギャグてんこ盛りのアクション・コメディ(と形容すべきか?)です。
 そして、単行本Aは「COMIC快楽天」1999年3月〜2000年1月号掲載分に加筆・修正した力作長編「吉原艶上!!魔剣華魁丸の巻」。
 これが大傑作!!
 魔剣を巡る謎が吉原の地下に潜む巨大モンスターにつながるという破天荒すぎる内容で、この巨大モンスターにはラヴクラフトも真っ青だゼ!!
 あと、魔剣が本当に血を吸っていて、ちょっぴり感心しました。(注1)
 ついでに、「女相撲」マニアも要チェックです。(途中からキャット・ファイトになり、後はレズ行為になっちゃてます。)
 斯様にエロ度が高い作品で万人向けとは言えませんが、作者のサービス精神があちこちでスパークし、無類のエンターテイメントに仕上がっておりますので、機会があれば、ご一読を是非ともお勧めしておきます。

 タイトル題字は故・平田弘史先生です。
 後に、故・みなもと太郎先生に怒られたとのことです。

・注1
 「血を吸う魔剣」ってありそうでないような気がしております。
 私が知る限りでは、他に黒岩一平「魔風吸血剣」ぐらいのものです。

2023年6月25・30日 ページ作成・執筆

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